SPSSの使い方 ~IBM SPSS Statistics超入門~ 第9回: SPSSによるクロス集計表 とカイ2乗検定

Web連載:SPSSの使い方

第9回:2変量の分析(質的×質的) クロス集計とカイ2乗検定

前回は、量的データ同士の分析である相関分析について解説を加えてきました。今回は、質的データと質的データ同士の関係性を把握するための分析手法、クロス集計表そしてカイ2乗検定について解説をしていきましょう。

2つの量的な変数の関係性を把握するクロス集計とカイ2乗検定

カテゴリーデータ同士の関係性を把握するための手法がクロス集計です。たとえば、お店の満足度調査で、自分のお店の評価を「非常に満足」から「非常に不満」の5段階で調査をしたとしましょう。そこに性別を加え、性別ごとにアンケートの回答に差があるのかを確認してみましょう。これがクロス集計表です。2つの質的変数の関係性を見ることができます。満足度は順序尺度、性別は名義尺度でいずれも質的変数ですね。

クロス集計表

今回のクロス集計を確認すると、どうやら満足度は性別によって差があるように思われます。女性の方が、満足度が高いようにも見えます。しかしながら、本当に差があるとしてもよいのでしょうか?それを確認するために行うのがカイ2乗検定です。カイ2乗検定は、「本来、2つの変数に関係がないのであるとするならば、各セルの度数は人数比に従うはず」
であるというものを帰無仮説にしています。人数比に従うはずであり理論的な値を期待値と言います。
この期待値と実測値の差分の2乗の値を各セルすべて足し合わせたものがカイ2乗値となります。このカイ2乗値がカイ2乗分布のどこ部分かを確認し、帰無仮説の採択するか棄却するかを決定します。それでは、。さっそくSPSSで実行するクロス集計表の作成とカイ2乗検定を実行してみましょう。

SPSSで実行するクロス集計とカイ2乗検定

それでは早速、SPSSでクロス集計を実行していきましょう。

spssによるクロス集計の設定

Step1:メニューから「分析」>「記述統計」>「クロス集計表」を選択します。


SPSSによるクロス集計表の設定

Step2:続いて詳細を設定していきましょう。

前回同様、SPSS Statisticsのデモサンプル、demo.savを利用しています。
今回は、行に「車の価格カテゴリ」を、列に「反応」の変数を選択します。
また、左下の[クラスタ棒グラフの表示]にもチェックを入れましょう。


SPSSによるクロス集計表の設定2

Step 3 : 「統計量」ボタンを押して必要な検定の設定をしましょう。

ここでは、検定を行うための設定を行います。
このダイアログ(画面)では、「カイ2乗」にまずチェックをいれましょう。カイ2乗検定を行う上で必要な設定です。また、効果量を算出するために「PhiおよびCramer V(P)」にチェックをいれます。
設定が終了したら「続行」ボタンを押しましょう。


SPSSによるクロス集計表の設定3

Step 4 : 続いて「セル」のボタンを押します。

このセルの画面では、「観測」「期待」にチェックをいれましょう。
また、パーセンテージの[行]にチェックを入れます。さらに「残差」の「調整済みの標準化」にチェックをいれます。チェックを入れ終わったら「続行」 を押します 。
クロス集計表の画面に戻ったら「OK」を押しましょう。


SPSSによるクロス集計・カイ二乗検定の出力の見方

SPSSによるクロス集計表とカイ二乗検定の出力

クロス集計表の結果とカイ二乗検定、効果量が出力されます。

まず、一番上にはクロス集計が出力されます。表の中に「期待値」と「観測(実測値)」の値がありますね。「期待値」とは、2つの変数に関係がないする帰無仮説を前提とした上で、各セルに入るべきであろう数のことです。なお、2つの変数(この場合には、車の価格と反応)に関係がない場合には、実測値と期待値が近しい値をとります。逆に関係がある場合には、実測値と期待値の差は開いている状態となります。

たとえば、上の表では、「反応あり」と「車の価格(安い)」のセルを見ていきましょう。期待値は34.1です。観測数(実際の値)は46ですね。この差は12ほどの乖離があります。一方「反応あり」と「車の価格(普通)」セルに注目すれば、期待値は43.8、観測値は47ですね。

この期待値と観測値の乖離度合いを式に当てはめ、計算した結果がカイ2乗値です。カイ二乗検定の欄の「値」はカイ2乗値を示しています。
また、その検定の結果は、「漸近有意確率(両側)」を確認しましょう。

有意水準自体は各研究領域によって異なりますが、5%を有意水準の基準としている場合には、0.05以下の数値であれば有意に差があると判断します。

なお、2×2のクロス表の場合には、Pearsonのカイ2乗検定ではなく、Fisherの直接法の部分を確認します。

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