【SPSS 31 新機能】AIアシスタントを専門家が解説|SPSS StatisticsのAI出力・自動解釈機能とは

2025年10月にリリースされた IBM SPSS Statistics 31.0.1 では、操作性・安定性の向上とともに、これまでのSPSSの使い方を大きく変える新機能が追加されました。
その中でも、最も注目を集めているのが
「AIアシスタント(AI出力アシスタント)」 です。 本記事は、SPSSの活用支援に長年携わってきた「SPSS超入門」の講師でもある畠が、SPSS Statistics 31の新機能のひとつである AI出力アシスタント を、研究・医療・ビジネスの実務視点からわかりやすく紹介します。
SPSS Statistics 31.0.1で何が変わったのか?
SPSS Statistics 31.0.1 では、次のような新機能・強化が行われました。
- AIによる 出力解釈支援(AI出力アシスタント)
- Boruta法による変数選択
- t検定のキュレーションヘルプ
- シンタックスエディタの新ショートカット
- JREのアップグレードによる安定性・セキュリティ向上
この中でも、SPSS Statisticsの“使い方そのもの”が変わるインパクトを持つのがAIアシスタントです。従来は「分析結果をどう解釈し、どう文章にするか」は人の仕事でした。SPSS Statistics 31からは、その一部を AIが直接支援する時代に入った と言えます。
SPSSのAIアシスタントとは?
SPSS Statistics 31に搭載された AI出力アシスタントは、SPSSの出力結果(表・統計量・グラフ)を選択すると、「この分析結果が何を意味しているのか?」を、AIが文章で説明してくれる機能です。この機能は IBM watsonx.ai を基盤とする大規模言語モデル(LLM)によって提供されています。分析結果をそのままAIに渡し、解釈・要約・考察のたたきを即座に生成できる点が最大の特徴です。
AIアシスタントの基本的な使い方
操作は非常にシンプルです。
- SPSSで分析(t検定、回帰分析、分散分析など)を実行
- 「出力ビュー」で、表やグラフをクリックして選択
- 画面右側に AIアシスタントパネル が表示
- 利用するAIモデルと説明モードを選択
- AIがその出力結果を文章で解説
難しい設定やプロンプト入力をしなくても、“結果を選ぶだけで説明が出てくる” というのが、SPSSらしい設計です。


どんなAIモデルが使えるのか?
SPSSのAIアシスタントでは、用途に応じて複数の大規模言語モデル(LLM)を選択できます。
- IBM Granite
大学・医療機関・自治体など、ガバナンス重視環境向けの安定モデル - Meta Llama 系(3.x 世代)
日本語の自然さ、説明力、論理性のバランスが良く、研究・業務レポート向け - その他の多言語モデル
処理速度や用途に応じて切り替え可能
「研究向け」「業務向け」「教育向け」でAIモデルそのものを使い分けられるのは、統計ソフトとしては非常に珍しい設計ですね。
説明スタイルも切り替えられる“プロンプトモード”
AIアシスタントには、あらかじめ以下のような説明モードが用意されています。
- 統計専門家モード:論文・学会・査読を意識した厳密な表現
- ビジネスモード:意思決定や施策検討に使いやすい要点整理
- 学生指導モード:初学者にもわかりやすい噛み砕いた解説
- データ品質・モデル頑健性モード
- カスタムプロンプト
「AIにどう聞けばいいかわからない問題」を、SPSS側があらかじめ解決してくれている設計になっています。
AIアシスタントは“統計の民主化”を一段進める可能性がある
これまでSPSSに長く関わってきた立場から見ると、今回のAIアシスタントは “操作支援”ではなく“思考支援”の機能 だと感じています。
従来のSPSSが
- 分析は正確にできる
- しかし「解釈」と「文章化」は完全に人任せ
- 初学者はここでつまずきやすい
それに対してSPSS 31以降:
- 分析結果に対し「AIが解釈し、最終的には人が判断」 という新しい分業が生まれた
- 初学者は“考え方の型”を学びやすく
- ベテラン研究者は“考察作業の時短”につながる
これは教育、研究、医療、ビジネスのすべてで、生産性を確実に引き上げる変化です。
どんな人に特に向いているのか?
AIアシスタントは、次のような方に特に相性が良い機能です。
- SPSSを使い始めたばかりの 大学生・大学院生
- 論文の「結果」「考察」の文章作成に時間がかかっている研究者
- 分析結果をすぐ資料にまとめたいマーケティング・企画部門
- 医療・看護・公衆衛生分野で説明責任が求められる研究
「統計はできる人」と「説明できる人」のギャップを、AIが橋渡ししてくれます。
AIアシスタントを使うための条件
AIアシスタントを利用するには、次の条件が必要です。
- IBM SPSS Statistics 31.0.1 以降
- IBM watsonx のトライアルまたは有料アカウント(弊社では利用しやすいチケットサービスをご用意しております)
- スマート・アナリティクスでは、より気軽に使えるチケット型サービスをご用意しております。
まとめ:SPSS 31のAIアシスタントは“分析のやり方”を変える新機能
SPSS Statistics 31のAIアシスタントは、
- 単なる便利機能ではなく
- 「分析 ⇒ 解釈 ⇒ 文章化」という一連の流れを変える機能です。
SPSSはこれまで「正確に分析できる専門ツール」でしたが、
SPSS 31からは「考えるプロセスまで支援するツール」へ進化し始めました。
本記事ではAIアシスタントのみを紹介しましたが、今後は Boruta、t検定、UI改善などの新機能も、同様に1本ずつ丁寧に解説していく予定です。

