SPSS Statistics 31 新機能紹介|距離相関

2025年にリリースされた SPSS Statistics 31 では、AIアシスタントに加えて、新しい機能が追加されました。その一つが、距離相関です。
本記事では、SPSS Statistics 31の新機能である距離相関 について、わかりやすく紹介します。
SPSS Statistics 31では、新たに距離相関(Distance Correlation)が標準機能として搭載されました。
距離相関は、従来の相関係数では捉えられなかった非線形・非単調な依存関係を定量的に検出できる指標です。
これまでの分析では、Pearson(ピアソン)の相関係数が0である場合、「変数間に関係はない」と判断されることが少なくありませんでした。しかし実際には、線形ではないが明確な関係構造が存在するケースは数多く存在します。距離相関は、そのような「見落とされてきた関係」を、統計的に扱える形で可視化・検定するための新しい選択肢です。
なぜ距離相関が必要なのか
従来の相関分析の限界
多くの研究・業務分析で用いられてきた相関係数には、次のような前提があります。
- Pearsonの相関係数
- 線形関係を前提
- 正規性・等分散性の仮定
- Spearmanの順位相関係数
- 単調関係を前提
- 非線形でも「単調」である必要あり
しかし現実のデータ、とくに以下のような場面ではこれらの前提が容易に崩れます。
- 消費行動と価格・満足度の関係
- 医療・心理データにおける閾値的反応
- 財務指標間の複雑な依存構造
- AI・特徴量設計前の探索分析
これらのケースでは、相関係数が0でも、明確な構造的関係が存在することが珍しくありません。
距離相関とは何か
「独立であるかどうか」を直接検定できる相関指標です。距離相関の最大の特徴は、次の一点に集約されます。
距離相関が0であることと、統計的独立が同値である
これは、Pearson相関やSpearman相関には存在しない、極めて重要な性質です。
- Pearson相関 = 0 線形関係がない
- 距離相関 = 0 完全に独立である
つまり距離相関は、「どのような形の依存関係であっても検出可能」な相関指標として設計されています。
例えば、以下のような関係ではPearson相関は0になります。
- 円形・U字型・波形の関係
- 対称性を持つ非線形構造
- 複数のクラスタが混在する依存関係
距離相関は、データ点間の距離構造そのものを用いて依存関係を測定するため、これらの関係を一貫して捉えることができます。
SPSS Statistics 31で何ができるのか
SPSS Statistics 31では、距離相関が追加オプションではなく、標準の分析機能として実装されています。
これにより、次のような分析フローが現実的になります。
- 探索的相関分析の段階で距離相関を併用
- 非線形関係の有無を定量的に判断
- 回帰分析・SEM・機械学習前の変数選別
特に、「なぜこの変数を使うのか」という説明責任が求められる研究・業務において、距離相関は強力な根拠を提供します。
SPSS Statistics 31での距離相関の出力イメージ

距離相関の出力は上記のような形式で出力されます。
研究での活用シナリオ
仮説探索・前処理の高度化
研究用途では、距離相関は以下の局面で有効です。
- 仮説が明確でない探索的研究
- 非線形効果が想定される心理・行動研究
- 回帰・SEM前の変数スクリーニング
従来は「相関が出ないため除外されていた変数」が、距離相関によって再評価される可能性があります。
ビジネス分析での活用シナリオ
マーケティング・財務・行動データ
ビジネス分野では、距離相関は次のような分析で威力を発揮します。
- 顧客満足度 × 購買行動
- 価格 × 需要の非線形関係
- Web行動ログ × コンバージョン
これらは直線的な関係を仮定しづらく、従来の相関分析では判断を誤りやすい領域です。
距離相関を用いることで、「関係がない」のか「関係の形が違う」のかを切り分けられます。
距離相関を使うための条件
距離相関は、SPSS Statistics 31で標準機能として提供されています。
- SPSS Statistics 31 以降
- 「分析」>「相関」> 「距離相関」で実行可能です。
まとめ
距離相関は、単なる「新しい相関係数」ではありません。
それは、分析者の判断を一段深いレベルへ引き上げるための探索ツールです。
- 相関が0でも関係があるかもしれない
- 線形という前提を疑う
- 仮説探索の質を高める
SPSS Statistics 31は、距離相関の実装によって、こうした分析姿勢を現実的なワークフローとして支援します。


