重回帰分析とは?
― 複数の説明変数で目的変数を予測・要因分析
目的変数を複数の説明変数で予測・制御する代表的な多変量解析手法。各説明変数の影響の程度を明らかにし、現実の意思決定に直結する予測・要因分析を行えます。
重回帰分析とは
目的変数を複数の説明変数で予測・制御する代表的な多変量解析手法。各説明変数の影響の程度を明らかにし、現実の意思決定に直結する予測・要因分析を行えます。
重回帰分析で分かること
- 各説明変数が目的変数に与える独立した影響
- 予測モデルとしての当てはまり(R²、調整済みR²)
- どの変数が相対的に重要か(標準化β)
- 予測値と信頼区間
重回帰分析の主な種類
| 手法 | 用途 |
|---|---|
| 強制投入法 | 理論的に選んだすべての変数を投入 |
| ステップワイズ法 | 統計的基準で変数を選択 |
| 階層的回帰 | 理論的優先度に基づき段階的に投入 |
| 最良サブセット選択 | AICなどの基準で最適変数組合せを探索 |
SPSSで重回帰分析を行うやり方(操作手順の概要)
重回帰分析は IBM SPSS Statistics Base の標準機能です。追加オプションを購入しなくても、メニュー操作だけで実行できます。代表的な流れは次のとおりです。
- ステップ1:データを準備する
目的変数(売上金額など連続変数)と説明変数を1つのデータセットにそろえ、変数ビューで尺度(スケール/名義/順序)を正しく設定します。性別などのカテゴリ変数は、あらかじめ0/1のダミー変数に変換しておきます。 - ステップ2:メニューを開く
メニューから [分析]→[回帰]→[線型] を選択します。 - ステップ3:変数を指定する
目的変数を「従属変数」に、説明変数を「独立変数」に投入します。 - ステップ4:変数選択の方法を選ぶ
「方法」で、理論的に選んだ変数をすべて投入する「強制投入法」か、統計的基準で取捨選択する「ステップワイズ法」を選びます。仮説が明確な研究では強制投入法が基本です。 - ステップ5:統計量を設定する
「統計量」ボタンから「共線性の診断」(VIFの出力)と、必要に応じて「Durbin-Watson」(残差の独立性の確認)にチェックを入れます。 - ステップ6:残差の図を指定する
「作図」ボタンで標準化残差のヒストグラムと正規P-Pプロットを指定し、前提条件の確認に備えます。 - ステップ7:実行して結果を確認する
[OK]で実行し、「モデル要約」「分散分析」「係数」の3つの表を中心に結果を読み取ります(読み取り方は次のセクションで解説します)。
結果の読み取りポイント
SPSSの重回帰分析では多くの表が出力されますが、まず確認すべきは次の3つです。
| 出力表 | 見る指標 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| モデル要約 | R²・調整済みR² | モデル全体で目的変数の変動を何%説明できているか。説明変数の数が多い場合は調整済みR²で評価・報告します。 |
| 分散分析(ANOVA) | F値・有意確率 | 回帰モデル全体が統計的に意味を持つかの検定です。有意確率が0.05未満であれば、モデル全体は有意と判断します。 |
| 係数 | B・標準化係数β・有意確率・VIF | Bは「説明変数が1単位増えたときの目的変数の変化量」、βは単位をそろえた影響度で、変数どうしの重要度比較に使います。VIFは多重共線性の確認に使います(10以上で要注意)。 |
このほか、標準化残差の正規P-Pプロットと散布図で「残差がおおむね正規分布し、特定のパターンを持たない」ことを確認すると、前提条件のチェックまで含めた報告ができます。論文・レポートでは、調整済みR²、F検定の結果、各係数のBとβ・95%信頼区間・有意確率を記載するのが一般的です。
研究・ビジネスでの利用シーン
売上要因の分析
マーケティング
広告費・価格・季節などの複数要因が売上に与える独立した影響を分析します。
リスク要因の特定
医療研究
年齢・性別・既往歴を調整した上で、特定要因の影響を分離します。
成果要因分析
人事評価
スキル・経験・教育などが業績に与える独立した影響を可視化します。
SPSSで実施する場合の製品選定
重回帰分析をSPSSで実施する際に必要となる製品とオプションを整理します。
| やりたいこと | 対応製品 | 備考 |
|---|---|---|
| 重回帰分析(連続目的変数) | IBM SPSS Statistics Base | 標準機能・ステップワイズ可 |
| ロジスティック回帰・非線型回帰 | IBM SPSS Regression | アドオン |
| 順序ロジスティック回帰 | IBM SPSS Advanced Statistics | 順序尺度の目的変数 |
| カテゴリ変数の回帰 | IBM SPSS Categories | 最適尺度法 |
分析時の注意点
- 多重共線性を VIF(≥10で要注意)で確認する
- 前提条件(線形性・独立性・正規性・等分散性)を確認
- ステップワイズ法は p-hacking の批判があるため理論的根拠を優先
- 因果関係の解釈には設計上の留意が必要
よくあるつまずきと対処のヒント
- 係数の符号が想定と逆になる — 説明変数どうしの強い相関(多重共線性)が原因であることが多い症状です。VIFを確認し、高相関の変数の統合・削除を検討します。
- カテゴリ変数をそのまま投入してしまう — 「1=営業、2=企画、3=製造」のようなコードをそのまま投入すると誤った結果になります。カテゴリ数より1つ少ない数のダミー変数(0/1)に変換してから投入します。
- R²の低さだけで分析を打ち切る — 人の行動や意識を扱う調査データではR²が0.2〜0.3程度でも有用な知見になる場合があります。数値の絶対水準ではなく、目的(予測か要因分析か)に照らして評価します。
- 外れ値の影響を見落とす — 少数の業端なケースが係数を大きく動かすことがあります。散布図やCookの距離などの診断統計量で、影響の大きいケースを確認します。
- 「有意=因果関係」と解釈してしまう — 重回帰分析が示すのはあくまで関連です。因果の主張には、研究デザイン(時間的先行・交絡の統制など)の裏付けが必要です。
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