因子分析とは?仕組みと結果の読み方をやさしく解説
みなさん、こんにちは。スマート・アナリティクスの畠です。
因子分析(factor analysis)は、アンケートの質問項目(観測変数といいます)などの背後にある、目に見えない共通の要因=因子(factor)を見つけ出す手法です。たとえば、ある態度尺度の20項目が「実は3つの潜在的な側面で説明できる」といった構造を、データから探り当てます。研究、とりわけ尺度開発や心理・社会・看護などの調査研究では、因子分析は、測定したい構成概念(construct)の妥当性を検討する中心的な道具です。このページでは、探索的因子分析の考え方、因子負荷量・共通性などの用語、因子分析の進め方(因子数の決定から抽出方法、回転方法、解釈)、因子得点の使い方、そして混同されがちな主成分分析との違いまでを、ていねいに見ていきます。
このページの要点
- 因子分析は、多数の観測変数の相関構造を、背後にある少数の共通因子で説明しようとする手法
- 出力は因子負荷量・共通性・寄与率で読む。負荷量は絶対値0.4前後が採否の目安(分野で変わる)
- 進め方は「因子数→抽出法→回転→解釈→因子得点」。KMO・Bartlettでデータの適性を最初に確認
- 主成分分析とは目的が別物。SPSSの既定が主成分法のため、取り違えに注意
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因子分析とは何か
因子分析は、観測された多数の変数の相関構造を、少数の共通因子で説明しようとするモデルです。考え方としては、各観測変数(アンケートの項目など)は「いくつかの共通因子の影響」と「その変数固有の成分(独自因子)」の和として表されます。
- 共通因子(common factor):複数の観測変数に共通して影響する、潜在的な変数。
- 独自因子(unique factor):その変数だけに固有の成分・誤差。
因子分析は「データに合わせて因子を後から見つける」探索的因子分析(EFA)と、「あらかじめ仮説した因子構造が当てはまるか検証する」確認的因子分析(CFA)に大別されます。EFAはSPSS Statistics、CFAはAmos(共分散構造分析)で行うのが一般的です。本ページは主に探索的因子分析を扱います。
覚えておきたい用語(因子負荷量・共通性・独自性・因子寄与)
因子分析の出力を読むには、次の用語を押さえておくと迷いません。
- 因子負荷量(factor loading):観測変数がその因子をどの程度反映しているかを示す値。−1.00〜1.00の範囲をとり、絶対値が大きいほど関連が強いと読みます(一般に0.6以上で高い、0.3未満で低い、とされることが多い/いずれも目安)。
- 共通性(communality):その観測変数が、抽出された共通因子によってどれだけ説明されるかの度合い。各因子負荷量の二乗和で、最大値は1です。
- 独自性(uniqueness):共通因子では説明されない、その変数固有の部分。「1−共通性」で表します。
- 因子寄与・寄与率:その因子が観測変数全体の変動をどれだけ説明しているかを示す指標。第1因子から順に足し上げたものが累積寄与率です。
共通性が低い変数は、用意した因子ではうまく説明できていない項目です。後述のとおり、共通性が著しく低い項目は外して再分析を検討します。
因子分析の5ステップ(全体像)
探索的因子分析は、おおむね次の順で進めます。本ページの後半はこの流れに沿っています。
- 因子数の決定:いくつの因子を取り出すかの基準を設ける。
- 因子抽出法の決定:どうやって因子を見つけるか。
- 因子の回転の決定:抽出した因子を解釈しやすくする。
- 因子の解釈・命名:各因子が何を表すかを読み取る。
- その後の分析:因子得点を使って次の分析につなげる。
その前提として、データが因子分析に向いているか(相関・KMO・Bartlett)を最初に確認します。
分析に進める前の確認(前提条件・KMO・Bartlett)
因子分析は変数間に相関があってこそ意味を持ちます。次の前提を確認します。
- 変数の種類:基本的に量的変数(間隔尺度・比尺度)を用います。
- 項目間の相関:相関がないと共通因子は見えません。相関0.3以上の組み合わせが乏しければ共通性が見られない可能性があり、逆に0.9以上が多いと多重共線性・単一性の恐れがあります(いずれも目安)。
- 必要な変数数・ケース数:因子数は質問項目の30〜40%程度が一つの目安(6因子を出したいなら18〜24変数)。ケース数は変数の5〜10倍程度が目安とされます(例:200ケースで6因子)。これらは経験則で、構造の明瞭さによって変わります。
- KMO(Kaiser-Meyer-Olkinの標本妥当性測度):データが因子分析にどれだけ適しているかを表す指標。0.6以上で妥当、0.8以上で良いデータとされることが多い(目安)。
- Bartlettの球面性検定:「母相関行列は単位行列(無相関)」を帰無仮説とする検定。棄却されれば、分析に値する相関があると判断します。
因子負荷量の読み方
因子負荷量は、各観測変数とそれぞれの因子との関連の強さを表します(直交回転の場合は相関係数のように解釈できます)。絶対値が大きい変数ほど、その因子を強く反映していると読み、各変数が「どの因子に高く負荷するか」を見て因子の中身を解釈します。
採否の境目には「絶対値0.4前後を目安にする」といった経験則が広く使われますが、これは分野・尺度・サンプルサイズで変わる目安です。複数因子に中程度に負荷する項目(交差負荷)の扱いも、解釈とあわせて検討します。
因子数の決め方
因子をいくつ抽出するかは、因子分析でもっとも判断を要するところです。代表的な基準を挙げます。
| 基準 | 考え方 | 注意 |
|---|---|---|
| 固有値1以上(Kaiserの基準) | 固有値が1を超える因子を採用。固有値は各因子の分散=観測変数いくつ分の情報量かを表す | 因子数を多めに出しがち。単独では使わない |
| スクリープロット | 固有値の折れ線が変化した部分で切る | 判断に主観が入る |
| 累積寄与率 | 上位の因子で全体の何%を説明できたかで判断 | 何%を基準にするかは分野による |
| 平行分析(parallel analysis) | 同サイズの乱数データの固有値と比較し、それを上回る因子だけ採用 | 客観性が高く、近年は推奨されることが多い |
基本的には固有値1以上の基準で良いと思います。ただ、因子を多く採用する癖もあります。そのため複数の基準(特に平行分析)と、解釈のしやすさ・理論的な妥当性を合わせて決めるのが、現代的な進め方と言えます。とはいえ、固有値1以上を基準にしても問題はありません。
因子抽出法の選び方
「どうやって因子を取り出すか」にはいくつかの方法があり、データに応じて選びます。
- 主因子法:第1因子から順に、因子寄与が最大になるように因子を抽出する古典的な方法。
- 最尤法(さいゆうほう):尤度を用いて抽出する方法。適合度検定ができ、予測精度が高い一方、小さいサンプルは苦手とされます。
- 一般化最小二乗法:サンプルサイズが小さいときに用いられることが多い方法。
適合度を確認したい・標本が十分なら最尤法、標本が小さいなら一般化最小二乗法、といった選び分けが目安になります。どの方法でも、最後は解釈のしやすさと理論的妥当性で判断します。
因子の回転はなぜ必要か
抽出したままの因子は、各変数が複数の因子にまたがって負荷し、解釈しにくいことがよくあります。そこで因子の回転(rotation)で、各変数ができるだけ少数の因子に高く負荷するよう座標軸を回し、単純構造に近づけます。
- 直交回転(バリマックス回転など):因子同士が無相関(直角)であることを前提に回す。解釈は明快だが、因子間に相関がある現象には合わないことがある。
- 斜交回転(プロマックス回転など):因子同士の相関を許して回す。心理・社会系の構成概念は互いに相関することが多いため、斜交回転が選ばれることが少なくありません。
回転はデータを「ねじ曲げる」操作ではなく、同じ解を解釈しやすい角度から見直す操作です。因子間に相関が想定される研究では斜交回転を検討しましょう。
因子の解釈と命名
回転後の負荷量の表(パターン行列)を見て、各因子に高く負荷する項目をまとめ、その共通の意味を読み取って因子を命名します。
たとえば性格を測る項目群を因子分析して、「不安になりやすい・心配性・傷つきやすい・動揺しやすい」が高く負荷する因子を神経質性、別のまとまりを外向性・勤勉性…と名づける、といった具合です。命名は解釈であり、第三者の意見も聞きながら、理論的な裏づけと整合させて決めるのが安全です。
因子得点(factor score)
因子分析のあとには、各回答者(ケース)ごとに因子得点を付与できます。一人につき各因子の得点が与えられ、ふつう平均0・標準偏差1に標準化された値として得られます(SPSSではAnderson-Rubin法などで保存)。
この因子得点をデータセットに書き出せば、そのまま次の分析(群比較・回帰・クラスター分析など)の変数として使えます。多数の項目を少数の因子得点に集約してから後続分析に進める、という流れです。
主成分分析との違い
因子分析と主成分分析(PCA)は出力が似ているため混同されがちですが、目的が異なります。
| 観点 | 因子分析 | 主成分分析 |
|---|---|---|
| 目的 | 観測変数の背後にある共通因子を推定 | 変数を少数の合成変数(主成分)に要約 |
| 扱う分散 | 共通分散(変数間で共有される部分) | 全分散 |
| 想定 | 潜在因子が観測変数を生み出す | 主成分は観測変数の重み付き和 |
「測定したい潜在概念の構造を知りたい」なら因子分析、「変数を情報の損失を抑えて少数次元に圧縮したい」なら主成分分析、と目的で選びます。SPSSの既定の抽出法が主成分法であるため、知らずに主成分分析を行っているケースに注意します。
SPSSでの操作の流れ(概要)
- 分析>次元分解>因子分析を開き、対象の項目(たとえば尺度を構成する一連の質問項目)をすべて「変数」に投入する。
- 記述統計で「KMOとBartlettの球面性検定」にチェックを入れる。
- 因子抽出で方法(例:最尤法)を選び、「スクリープロット」を表示にする。
- 回転で方法(例:プロマックス)を選ぶ。因子が収束しない場合は「最大反復回数」を増やす。
- 得点で「変数として保存」(例:Anderson-Rubin法)にチェックし、因子得点をデータに出力する。
- オプションで「サイズによる並び替え」にチェックして実行する。
- 出力は、KMO・Bartlett→共通性(低い項目は除いて再実行を検討)→説明された分散の合計(固有値1以上・累積寄与率)→パターン行列(因子負荷量で命名)の順に確認する。
| 項目 | 因子1 | 因子2 |
|---|---|---|
| 不安になりやすい | 0.78 | 0.09 |
| 心配性だ | 0.71 | 0.05 |
| 動揺しやすい | 0.66 | 0.12 |
| 人と話すのが好きだ | 0.07 | 0.74 |
| 社交的だ | 0.11 | 0.69 |
よくある質問

