統計学超入門⑦|仮説を検証するという発想:統計的判断の基本

1. なぜ「仮説」を立てるのか

第6回では、相関という考え方を学びました。

相関を見ると、しばしば次のように感じます。

「関係がありそうだ」
「違いがありそうだ」

しかし、ここで統計は一歩立ち止まります。

それは、本当に意味のある違いなのか?
それとも、たまたまそう見えているだけなのか?

この問いに答えるために登場するのが、
仮説を検証するという発想です。


2. 仮説とは「世界を2つに分ける宣言」

統計における仮説とは、

データを見る前に立てる、
判断の基準となる主張

です。

ここで重要なのは、仮説は「正しそうな意見」ではない、という点です。

統計では、世界を次の2つに分けます。

帰無仮説(H₀)

「差はない」「効果はない」「関係はない」

という立場。

  • 平均に差はない

  • 処置の効果はない

  • 相関はゼロである


    という、慎重な仮説です。

対立仮説(H₁)

「差がある」「効果がある」「関係がある」(厳密には差がないとはいえない)

という立場。私たちが「本当はそうであってほしい」仮説は、多くの場合こちらです。

3. なぜ「差がない」から始めるのか

ここで、多くの人が疑問に思います。

なぜ「差がある」ではなく、「差がない」を基準にするのか?

理由はシンプルです。

「何も起きていない」という状態のほうが、より安全で疑いにくいから

統計は、疑いにくい仮説をまず置き、それをデータで崩せるかを見るという姿勢を取ります。

これは研究でも、ビジネスでも、意思決定のリスクを下げる考え方です。

4. 検証とは「確率で判断する」こと

仮説は、「正しいか・間違っているか」で判断しません。

統計が問うのは、次の一点です。

帰無仮説が正しいとしたら、
今回のデータはどれくらい起こりにくいか?

もし、

  • 「めったに起こらない」

    のであれば、

帰無仮説は疑わしい

と判断します。

これが、確率にもとづく判断です。

5. p値とは何か(直感的理解)

ここで登場するのが、p値です。

p値とは、

帰無仮説が正しいと仮定したときに、
今回と同じか、それ以上に極端な結果が
得られる確率

を表します。

重要なのは、

p値は「仮説が正しい確率」ではない

という点です。

p値はあくまで、

  • データがどれくらい珍しいか

を示す指標です。

6. 有意とは「偶然では説明しにくい」

統計ではよく、

「有意である」
「有意ではない」

という表現が使われます。

これは、

  • 大きい

  • 重要

  • 意味がある

    という日常語とは異なります。

統計における「有意」とは、

偶然だけでは説明しにくい

という、非常に限定的な意味です。

有意水準という考え方

多くの場合、

  • 5%(0.05)

という基準が使われます。

これは、

「100回に5回くらいなら、
たまたまでも起こりうる」

というラインです。それより珍しければ、

偶然ではなさそうだ

と判断します。

7. 検定は「決断のための道具」

統計的検定は、

  • 真理を証明する

  • 正解を示す

ものではありません。役割はただ一つです。

不確実な状況で、
一定のルールにもとづいて
判断を下すこと

研究では、

  • 論文として主張してよいか

ビジネスでは、

  • 意思決定に進んでよいか

を支えるための道具です。

8. 次回へのつながり

次回・第8回では、

  • 検定結果をどう読むのか

  • p値をどう解釈すべきか

を扱います。

「有意だった/有意でなかった」
その一言の裏に、
何が含まれていて、
何が含まれていないのか。

ここを誤解しないことが、
統計リテラシーの分水嶺になります。

第7回のまとめ

  • 仮説とは、判断基準を事前に決めること

  • 統計は「差がない」という仮説から始める

  • 検証は確率にもとづく判断

  • p値は「データの珍しさ」を表す

  • 有意とは「偶然では説明しにくい」という意味


    ここまで来れば、統計はもう「数字の儀式」ではありません。

次回、第8回で検定結果との正しい付き合い方を学びましょう。