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不等号と「p<0.05」の読み方(<・>・≦・≧)

統計の本や論文で「p<0.05」という記号の並びに出会って、思わず身構えてしまった方はいませんか。心配いりません。この真ん中にある「<」は、じつは小学校の算数で一度は会っている、あの記号なんです。この記事では、4つの不等号の読み方から、統計でいちばんよく登場する「p<0.05」の意味まで、ゆっくり一緒に見ていきます。

執筆:畠 慎一郎(スマート・アナリティクス株式会社)

「<」は、じつは小学校で会っています

いきなり「p<0.05」と言われると、記号の見た目だけで難しそうに感じてしまいますよね。でも、真ん中にある「<」という記号、どこかで見た覚えはありませんか。そう、小学校の算数で「3<5」のように習った、大小をくらべる記号です。名前は「小なり(しょうなり)」といいます。

統計に出てくる記号の多くは、こうして「昔どこかで会ったもの」に、少しだけ意味が足されているだけ、ということがよくあります。まずは肩の力を抜いて、記号そのものと仲直りするところから始めましょう。

迷ったら「口が開いている方が大きい」

不等号は、ワニの口だと思うとわかりやすいです。とがっている方が小さい数、口が大きく開いている方が大きい数。ワニは大きいエサの方へ口を開ける、と覚えてもいいですね。

口が開いた側が大きい3<5大きい小さい口が開いた側が大きい8>2大きい小さい
図1:とがった側が小さい数、口が開いた側が大きい数。左右どちらから見ても同じルールです。

たとえば「3<5」は、口が右の5の方へ開いているので「3は5より小さい」。「8>2」は口が左の8へ開いているので「8は2より大きい」。左右どちらから見ても、口が開いた側が大きい、と覚えておけば迷いません。

4つの記号を整理しましょう

不等号は全部で4つ。「イコールが下についているか」で、その数そのものを含むかどうかが変わります。表にまとめておきますね。

記号読み方意味
<小なり左は右より小さい(含まない)3 < 5(3は5より小さい)
>大なり左は右より大きい(含まない)5 > 3(5は3より大きい)
小なりイコール(以下)左は右以下(等しいも含む)x ≦ 170(170以下)
大なりイコール(以上)左は右以上(等しいも含む)x ≧ 170(170以上)
ことばメモ 「≦・≧」と「≤・≥」は、見た目が少し違うだけで意味は同じです。日本の教科書では≦・≧、海外の本や論文では≤・≥がよく使われます。どちらも「以下・以上」と読んで大丈夫です。

「以上・以下」と「より大きい・未満」はどう違う?

ここが最初のつまずきポイントです。「170以上」は170を含み、「170より高い」は170を含みません。「≦・≧」はイコールを含むぶん、その数ちょうどもOK。身長を例に、数直線で見てみましょう。

x ≧ 170
身長xが170以上(170ちょうども含む)、という意味です。
170以上(x ≧ 170):170を含む150160170180190含む170より高い(x > 170):170を含まない150160170180190含まない
図2:赤い■は170を含む(以上)、白い□は170を含まない(より大きい)ことを表します。
ことばメモ 「以上・以下」はその数そのものを含みます(170以上は170もOK)。含めたくないときは「より大きい・より小さい」や「未満」を使います(170未満は170を含みません)。

統計でいちばん出会う「p<0.05」

準備ができたので、本題の「p<0.05」を読んでみましょう。記号の意味さえわかっていれば、もう半分は読めています。

p < 0.05
「ピー しょうなり れいてんれいご」と読みます。p値が0.05より小さい、という意味です。

この0.05は「有意水準(ゆういすいじゅん)」と呼ばれる、あらかじめ決めておく“めったにない”の線引きです。多くの場面で0.05(5%)が使われます。「p<0.05」は、その線よりもさらに珍しいところにデータがある、という状態を指しています。

ことばメモ 有意水準(ゆういすいじゅん)は、「これより珍しければ“偶然では説明しにくい”と判断しよう」と、調べる前に決めておく線引きです。慣習的に0.05(5%)がよく使われます。

p値って、ざっくり何?

p値をひとことで言うなら「偶然だけでは説明しにくい度合い」です。値が小さいほど「これはさすがに偶然だけでは起きにくいな」という意味になります。

たとえばコインを10回投げて10回とも表が出たら、「たまたまにしては出来すぎでは?」と感じますよね。その“出来すぎ感”を数字にしたのがp値、とイメージしてください。下の図は、そのイメージを山の形で表したものです。

両端の裾(すそ)を合わせて約5% =「めったに起きない」約2.5%約2.5%ふつうに起きる範囲(真ん中)
図3:山の真ん中はふつうに起きること。左右の赤い裾を合わせて約5%が「めったに起きない」領域で、これが「p<0.05」のイメージです。
ことばメモ p値は「偶然だけでは説明しにくい度合い」をざっくり表す数字です。0から1のあいだの値で、小さいほど「偶然では起きにくい(=意味がありそう)」となります。

手を動かす:0.03<0.05 は「有意」

では実際に手を動かしてみましょう。ある調べもので、p値が0.03と出たとします。有意水準は0.05。さあ、0.03と0.05、口はどちらへ開くでしょうか。

0.03 < 0.05
0.03は0.05より小さい。だから「p<0.05」を満たします(有意の目安)。

0.03の方が小さいので、口は0.05へ開いて「0.03<0.05」。つまり「p<0.05」を満たしています。これを統計では「有意(ゆうい)」=偶然だけでは説明しにくい差がありそう、と読みます。

逆に、p値が0.08だったらどうでしょう。

0.08 > 0.05
0.08は0.05より大きい。この場合は「有意とはいえない」と読みます。

今度は0.08の方が大きいので「0.08>0.05」。「p≧0.05」なので「有意とはいえない」。これだけです。大小をくらべて、線(0.05)の内か外かを見るだけなんですね。

まとめ

  • 不等号は4つ。<(小なり)、>(大なり)、≦(以下)、≧(以上)。
  • 迷ったら「口が開いている方が大きい」。とがった側が小さい数です。
  • 「≦・≧(以上・以下)」はその数を含み、「<・>(より小さい・より大きい)」「未満」は含みません。
  • 「p<0.05」は「p値が0.05より小さい」。0.05は“めったにない”の線引き(有意水準)です。
  • p値はざっくり「偶然だけでは説明しにくい度合い」。小さいほど偶然では起きにくい。
  • p<0.05なら「有意」、p≧0.05なら「有意とはいえない」。大小をくらべるだけです。

よくある質問(FAQ)

「p<0.05」は結局どう読めばいいですか?
「ピー しょうなり れいてんれいご」、つまり「p値が0.05より小さい」と読みます。統計では、この状態を「偶然だけでは説明しにくい差がありそう(=有意)」と判断する、ひとつの目安にします。
「≦」と「≤」は違う記号ですか?
見た目は少し違いますが、意味は同じ「以下(その数を含む)」です。日本の教科書では≦・≧、海外の本や論文では≤・≥がよく使われます。どちらも同じと考えて大丈夫です。
「170以上」は170を含みますか?
はい、含みます。「以上・以下」はその数そのものを含みます(170以上は170もOK)。含めたくないときは「より大きい」「未満」を使います(170未満は170を含みません)。
p値が0.05より大きいと「差がない」という意味ですか?
いいえ、「差がない」と証明できたわけではありません。「今回のデータでは、偶然では説明できないとまでは言えなかった」という控えめな結果です。「有意ではない=差がゼロ」ではない点に注意しましょう。
なぜ0.05なのですか? 他の数字ではだめですか?
0.05は昔からよく使われる慣習的な目安で、絶対の基準ではありません。分野によっては0.01などより厳しい線を使うこともあります。大切なのは「調べる前に線を決めておく」ことです。
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執筆:畠 慎一郎
スマート・アナリティクス株式会社 代表。SPSS、日本IBM、セールスフォースを経て現職。統計解析ソフトの現場に20年あまり関わり、総務省統計局の研修講師も務める。著書3冊。「むずかしい統計を、はじめての人にもやさしく」をモットーに執筆しています。