分析手法 完全ガイド

クラスター分析とは?グループ分けの仕組みをやさしく解説

読了の目安約12分 難易度多変量解析の入り口に立つ方向け 最終更新2026.07.02

みなさん、こんにちは。スマート・アナリティクスの畠です。 「たくさんの対象を、似たもの同士でいくつかのタイプに分けたいのですが、どう手をつければいいでしょうか?」——量的研究に取り組む方から、こうしたご相談をよくいただきます。回答や測定値のパターンを眺めても、対象が何種類くらいに分かれるのかは、見ているだけではなかなか見えてきません。そんなときに頼りになるのが、今回ご紹介するクラスター分析(cluster analysis)です。クラスター分析は、あらかじめ正解のグループを与えずに、似たもの同士が同じグループ(クラスター)になるように対象を自動的に分類する手法で、対象の類型化(タイポロジー化)や、データの中に潜む構造の探索に広く使われています。このページでは、クラスター分析の考え方、階層的とk-means法の違い、距離と結合法、変数の標準化がなぜ要るのか、クラスター数の決め方、そして混同されやすい因子分析との違いまでを、研究で使う知識として順番にやさしく解説していきます。

畠 慎一郎
畠 慎一郎 スマート・アナリティクス株式会社 代表取締役 統計解析ソフトの提供と分析のサポートを通じて、研究や学習でデータ分析につまずく場面をたくさん見てきました。このガイドでも、わかりにくいところをやさしく解説していきます。
このページの要点
  • クラスター分析は、似たもの同士が同じグループ(クラスター)になるように対象を自動的に分類する手法。正解ラベルを使わない教師なしの分析で、対象の類型化に使う
  • 大きく階層的クラスター分析(デンドログラムで枝分かれを作る)と非階層的=k-means法(クラスター数を先に決めて割り当てを繰り返す)の2系統がある
  • 結果は距離(ユークリッド距離など)と結合法(ウォード法など)の選び方で変わる。何を使ったかは報告に明記する
  • 距離に基づくため、単位の異なる変数を混ぜるときは標準化(平均0・標準偏差1)が基本。標準化を忘れるとスケールの大きい変数だけで決まってしまう
  • 「正しいクラスター数」を一発で決める万能の方法はない。デンドログラム・複数kの比較・実質的な解釈を併用する
  • 因子分析と似て見えるが、まとめる対象が逆。対象(ケース)をまとめるのがクラスター分析、変数をまとめるのが因子分析

クラスター分析とは何か

クラスター分析の発想はシンプルです。対象同士の「近さ(距離)」を測り、近いもの同士をまとめていく――これだけです。観測された複数の変数の値から、似ている対象を同じグループ=クラスターに、似ていない対象を別のクラスターに振り分けます。

  • 教師なし——正解ラベルを使いません。だからこそ、未知の構造を探索的に見つけるのに向きます。
  • 対象をまとめる——変数ではなく、ケース(対象)をグループ化します。たとえば「複数の指標の値のパターンから、対象を数タイプに分類し、タイプごとの特徴を記述する」といった使い方です。
ここがポイント
クラスター分析は「正解のない分類」です。出てきたクラスターが意味のあるものかどうかは、統計だけでは決まらず、研究者の解釈と理論的な妥当性で判断します。

階層的クラスター分析とk-means法

クラスター分析には大きく2つの系統があります。対象数や目的に応じて使い分けます。

手法仕組み向く場面
階層的クラスター分析近いもの同士を1つずつ併合し、枝分かれ(デンドログラム)を作る対象数が比較的少なく、クラスター数を後から眺めて決めたいとき
非階層的(k-means法)あらかじめクラスター数kを決め、各対象を最も近い中心に割り当てる作業を繰り返す対象数が多いとき。計算が軽い
対象A 対象B 対象C 対象D 対象E この高さで切ると3クラスター 距離(小 → 大)
図1:デンドログラム(樹形図)の読み方。下から近い対象どうしが順に併合され、上にいくほど併合の距離が大きくなる。点線の高さで水平に切ると、その位置で分かれるクラスター数(ここでは {A,B}/{C,D}/{E} の3つ)が決まる。
ここがポイント
階層的はデンドログラムで「いくつに分けるか」を後から検討できるのが強み。k-means法は事前にクラスター数を決める必要があり、初期値しだいで結果が変わる点に注意します。

距離と結合法

クラスター分析の結果は、「対象間の距離をどう測るか」「クラスター同士をどうまとめるか(結合法)」の選び方に左右されます。

  • 距離——量的変数ではユークリッド距離(各変数の差の二乗和の平方根)がよく使われます。直線距離のイメージです。
  • 結合法(階層的の場合)——クラスター内のばらつきを最小化するウォード法(Ward法)が、まとまりのよいクラスターを作りやすく、広く使われます。ほかに最短距離法・最長距離法・群平均法などがあります。
ユークリッド距離 = √( (x₁−y₁)² + (x₂−y₂)² + … + (xₚ−yₚ)² )
(2つの対象 x・y を、p個の変数の差の二乗和の平方根で測る)
ここがポイント
距離や結合法を変えると、クラスターの形や数が変わります。「どの距離・どの結合法を使ったか」は結果の一部であり、論文・報告に必ず明記します。

変数の標準化がなぜ必要か

クラスター分析は距離に基づくため、変数の単位(スケール)が結果を大きく左右します。たとえば、ある変数が0〜1000の範囲、別の変数が0〜10の範囲だと、距離計算では前者ばかりが効いてしまいます。

そこで、単位の異なる変数を混ぜるときは、各変数を標準化(平均0・標準偏差1)してから距離を計算するのが基本です。標準化は、各値から平均を引いて標準偏差で割る(Zスコア化)操作で、すべての変数を同じものさしにそろえます。

ここがポイント
標準化を忘れると、「たまたまスケールの大きい変数」だけでクラスターが決まってしまいます。クラスター分析では、距離計算の前の標準化が結果の質を左右します。

クラスター数の決め方

クラスター分析には「正しいクラスター数」を一発で決める万能の方法はありません。複数の手がかりを併用します。

手がかり考え方注意
デンドログラム枝が大きく伸びる(併合の距離が急に増える)ところで水平に切るどこで切るかに主観が入る
クラスター数を変えて比較いくつかのkで分けてみて、解釈のしやすさ・各クラスターの大きさのバランスを見るk-means法は事前にkが必要
実質的な意味研究上、説明可能で再現しそうな分け方になっているか統計指標だけで決めない
ここがポイント
クラスター数は統計指標だけでなく、「分けて意味があるか」という研究者の判断で決まります。少数すぎても多すぎても解釈が難しくなります。

因子分析との違い

クラスター分析と因子分析は、どちらも「まとめる」手法ですが、まとめる対象が逆です。

観点クラスター分析因子分析
まとめる対象対象(ケース)変数
出力対象のグループ分け変数の背後の共通因子
問い「似た人はどう分かれるか」「似た項目は何を測っているか」
ここがポイント
「人(対象)を分類したい」ならクラスター分析、「項目(変数)の構造を知りたい」なら因子分析、と問いの向きで選びます。なお、主成分分析で次元を縮約してからクラスター分析にかける、という組み合わせもよく使われます。
SPSSでの実際の操作は「使い方」シリーズで
本ガイドは考え方の解説です。SPSS画面での具体的な操作手順は連載でていねいに紹介しています。
SPSSの使い方シリーズ →

SPSSでの操作の流れ

SPSSでは、「分析」→「分類」から、デンドログラムを出せる階層クラスタか、大規模データ向けの大規模ファイルのクラスタ(k-平均法)を選びます。ここでは階層クラスタの全体像をつかんでください。実際の画面操作はSPSSの使い方シリーズで詳しく扱います。

ステップ1:分析→分類→階層クラスタを開き、変数を投入

「分析」→「分類」→「階層クラスタ分析」

分類に使う量的変数をすべて「変数」に投入し、クラスタ化の対象が「ケース」になっていることを確認します。

ステップ2:方法で距離とクラスタ化の方法を指定

「方法」で、測定(距離)を「平方ユークリッド距離」など、クラスタ化の方法を「Ward法」などに指定します。

ステップ3:値の変換で標準化を設定

同じ「方法」ダイアログの「値の変換」で、単位の異なる変数を混ぜる場合は「Zスコア」を選び、変数を標準化します。

ステップ4:作図でデンドログラムを表示にチェック

「作図」で「デンドログラム」にチェックを入れ、樹形図を出力できるようにします。

ステップ5:出力を解釈してクラスター数を決める

出力は、クラスタ凝集経過工程(どの段階で距離が急に増えるか)→デンドログラム(どの高さで切るか)の順に確認し、解釈のしやすさとあわせてクラスター数を決めます。SPSSの具体的な画面操作は「SPSSの使い方」シリーズでくわしく解説しています。

クラスター分析と関連の深い分析手法・SPSSでの具体的な実装手順を以下にまとめます。研究設計や論文執筆の参考にあわせてご活用ください。

つまずきやすいポイントと注意点

クラスター分析でつまずきやすいポイントを、ここで整理しておきます。

1. 標準化を忘れる。距離に基づく手法なので、単位の異なる変数を混ぜるときは標準化が前提です。標準化を忘れると、スケールの大きい変数だけでクラスターが決まってしまいます。

2. クラスター数を統計だけで決めてしまう。デンドログラムの切れ目や複数kの比較に加え、「分けて意味があるか」という実質的な判断を必ず併用します。

3. 距離・結合法の選択を報告しない。距離や結合法を変えると結果が変わります。どれを使ったかは結果の一部であり、論文・報告に明記します。

4. k-means法の結果が安定しないのに放置する。k-means法は初期値で結果が変わることがあります。複数回実行する、初期値を工夫するなどで安定性を確認します。

5. クラスター分析と因子分析を取り違える。対象(ケース)を分類したいのか、変数の構造を知りたいのか、目的を最初に決めましょう。まとめる対象が逆です。

よくある質問

Q階層的クラスター分析とk-means法はどう違うのですか?
階層的は近いもの同士を順に併合してデンドログラムを作り、クラスター数を後から検討できます。k-means法は事前にクラスター数を決め、割り当てを繰り返す方法で、大規模データに向きます。
Qクラスター数はどう決めますか?
デンドログラムの切れ目、複数のkでの比較、実質的な解釈のしやすさを併用します。統計だけで一意には決まりません。少数すぎても多すぎても解釈が難しくなります。
Qなぜ変数の標準化が必要なのですか?
距離計算では単位の大きい変数が支配的になりがちです。単位の異なる変数を混ぜるときは、標準化(平均0・標準偏差1)してスケールをそろえます。
Q因子分析とどう違うのですか?
クラスター分析は対象(ケース)をまとめ、因子分析は変数をまとめます。問いの向きが逆で、「似た人はどう分かれるか」と「似た項目は何を測っているか」の違いです。
Q結果が安定しないときはどうしますか?
k-means法は初期値で結果が変わることがあります。複数回実行する、初期値を工夫する、距離・結合法・標準化を見直す、などで安定性を確認します。
Qどんなデータに向いていますか?
似た者同士をまとめて類型を探索したいデータに向きます。量的変数を中心に、適切な距離が定義できることが前提です。
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