クラスター分析とは?グループ分けの仕組みをやさしく解説
みなさん、こんにちは。スマート・アナリティクスの畠です。 「たくさんの対象を、似たもの同士でいくつかのタイプに分けたいのですが、どう手をつければいいでしょうか?」——量的研究に取り組む方から、こうしたご相談をよくいただきます。回答や測定値のパターンを眺めても、対象が何種類くらいに分かれるのかは、見ているだけではなかなか見えてきません。そんなときに頼りになるのが、今回ご紹介するクラスター分析(cluster analysis)です。クラスター分析は、あらかじめ正解のグループを与えずに、似たもの同士が同じグループ(クラスター)になるように対象を自動的に分類する手法で、対象の類型化(タイポロジー化)や、データの中に潜む構造の探索に広く使われています。このページでは、クラスター分析の考え方、階層的とk-means法の違い、距離と結合法、変数の標準化がなぜ要るのか、クラスター数の決め方、そして混同されやすい因子分析との違いまでを、研究で使う知識として順番にやさしく解説していきます。
- クラスター分析は、似たもの同士が同じグループ(クラスター)になるように対象を自動的に分類する手法。正解ラベルを使わない教師なしの分析で、対象の類型化に使う
- 大きく階層的クラスター分析(デンドログラムで枝分かれを作る)と非階層的=k-means法(クラスター数を先に決めて割り当てを繰り返す)の2系統がある
- 結果は距離(ユークリッド距離など)と結合法(ウォード法など)の選び方で変わる。何を使ったかは報告に明記する
- 距離に基づくため、単位の異なる変数を混ぜるときは標準化(平均0・標準偏差1)が基本。標準化を忘れるとスケールの大きい変数だけで決まってしまう
- 「正しいクラスター数」を一発で決める万能の方法はない。デンドログラム・複数kの比較・実質的な解釈を併用する
- 因子分析と似て見えるが、まとめる対象が逆。対象(ケース)をまとめるのがクラスター分析、変数をまとめるのが因子分析
クラスター分析とは何か
クラスター分析の発想はシンプルです。対象同士の「近さ(距離)」を測り、近いもの同士をまとめていく――これだけです。観測された複数の変数の値から、似ている対象を同じグループ=クラスターに、似ていない対象を別のクラスターに振り分けます。
- 教師なし——正解ラベルを使いません。だからこそ、未知の構造を探索的に見つけるのに向きます。
- 対象をまとめる——変数ではなく、ケース(対象)をグループ化します。たとえば「複数の指標の値のパターンから、対象を数タイプに分類し、タイプごとの特徴を記述する」といった使い方です。
クラスター分析は「正解のない分類」です。出てきたクラスターが意味のあるものかどうかは、統計だけでは決まらず、研究者の解釈と理論的な妥当性で判断します。
階層的クラスター分析とk-means法
クラスター分析には大きく2つの系統があります。対象数や目的に応じて使い分けます。
| 手法 | 仕組み | 向く場面 |
|---|---|---|
| 階層的クラスター分析 | 近いもの同士を1つずつ併合し、枝分かれ(デンドログラム)を作る | 対象数が比較的少なく、クラスター数を後から眺めて決めたいとき |
| 非階層的(k-means法) | あらかじめクラスター数kを決め、各対象を最も近い中心に割り当てる作業を繰り返す | 対象数が多いとき。計算が軽い |
階層的はデンドログラムで「いくつに分けるか」を後から検討できるのが強み。k-means法は事前にクラスター数を決める必要があり、初期値しだいで結果が変わる点に注意します。
距離と結合法
クラスター分析の結果は、「対象間の距離をどう測るか」と「クラスター同士をどうまとめるか(結合法)」の選び方に左右されます。
- 距離——量的変数ではユークリッド距離(各変数の差の二乗和の平方根)がよく使われます。直線距離のイメージです。
- 結合法(階層的の場合)——クラスター内のばらつきを最小化するウォード法(Ward法)が、まとまりのよいクラスターを作りやすく、広く使われます。ほかに最短距離法・最長距離法・群平均法などがあります。
(2つの対象 x・y を、p個の変数の差の二乗和の平方根で測る)
距離や結合法を変えると、クラスターの形や数が変わります。「どの距離・どの結合法を使ったか」は結果の一部であり、論文・報告に必ず明記します。
変数の標準化がなぜ必要か
クラスター分析は距離に基づくため、変数の単位(スケール)が結果を大きく左右します。たとえば、ある変数が0〜1000の範囲、別の変数が0〜10の範囲だと、距離計算では前者ばかりが効いてしまいます。
そこで、単位の異なる変数を混ぜるときは、各変数を標準化(平均0・標準偏差1)してから距離を計算するのが基本です。標準化は、各値から平均を引いて標準偏差で割る(Zスコア化)操作で、すべての変数を同じものさしにそろえます。
標準化を忘れると、「たまたまスケールの大きい変数」だけでクラスターが決まってしまいます。クラスター分析では、距離計算の前の標準化が結果の質を左右します。
クラスター数の決め方
クラスター分析には「正しいクラスター数」を一発で決める万能の方法はありません。複数の手がかりを併用します。
| 手がかり | 考え方 | 注意 |
|---|---|---|
| デンドログラム | 枝が大きく伸びる(併合の距離が急に増える)ところで水平に切る | どこで切るかに主観が入る |
| クラスター数を変えて比較 | いくつかのkで分けてみて、解釈のしやすさ・各クラスターの大きさのバランスを見る | k-means法は事前にkが必要 |
| 実質的な意味 | 研究上、説明可能で再現しそうな分け方になっているか | 統計指標だけで決めない |
クラスター数は統計指標だけでなく、「分けて意味があるか」という研究者の判断で決まります。少数すぎても多すぎても解釈が難しくなります。
因子分析との違い
クラスター分析と因子分析は、どちらも「まとめる」手法ですが、まとめる対象が逆です。
| 観点 | クラスター分析 | 因子分析 |
|---|---|---|
| まとめる対象 | 対象(ケース) | 変数 |
| 出力 | 対象のグループ分け | 変数の背後の共通因子 |
| 問い | 「似た人はどう分かれるか」 | 「似た項目は何を測っているか」 |
「人(対象)を分類したい」ならクラスター分析、「項目(変数)の構造を知りたい」なら因子分析、と問いの向きで選びます。なお、主成分分析で次元を縮約してからクラスター分析にかける、という組み合わせもよく使われます。
SPSSでの操作の流れ
SPSSでは、「分析」→「分類」から、デンドログラムを出せる階層クラスタか、大規模データ向けの大規模ファイルのクラスタ(k-平均法)を選びます。ここでは階層クラスタの全体像をつかんでください。実際の画面操作はSPSSの使い方シリーズで詳しく扱います。
ステップ1:分析→分類→階層クラスタを開き、変数を投入
分類に使う量的変数をすべて「変数」に投入し、クラスタ化の対象が「ケース」になっていることを確認します。
ステップ2:方法で距離とクラスタ化の方法を指定
「方法」で、測定(距離)を「平方ユークリッド距離」など、クラスタ化の方法を「Ward法」などに指定します。
ステップ3:値の変換で標準化を設定
同じ「方法」ダイアログの「値の変換」で、単位の異なる変数を混ぜる場合は「Zスコア」を選び、変数を標準化します。
ステップ4:作図でデンドログラムを表示にチェック
「作図」で「デンドログラム」にチェックを入れ、樹形図を出力できるようにします。
ステップ5:出力を解釈してクラスター数を決める
出力は、クラスタ凝集経過工程(どの段階で距離が急に増えるか)→デンドログラム(どの高さで切るか)の順に確認し、解釈のしやすさとあわせてクラスター数を決めます。SPSSの具体的な画面操作は「SPSSの使い方」シリーズでくわしく解説しています。
関連分析手法・SPSS実装ガイド
クラスター分析と関連の深い分析手法・SPSSでの具体的な実装手順を以下にまとめます。研究設計や論文執筆の参考にあわせてご活用ください。
- 因子分析とは? — クラスター分析と対になる「変数をまとめる」手法。問いの向きの違いを押さえましょう。
- 相関分析とは? — 距離・標準化の前提となる、変数間の関連の基礎。
- カイ二乗検定とは? — クラスター(カテゴリ)と他のカテゴリ変数の関連を調べる検定。
- 一元配置分散分析(ANOVA)とは? — できたクラスターを群として、平均値の差を比較する際に使います。
- t検定とは? — 2つのクラスター間で平均差を調べる基本の検定。
- 正規分布とは? — 量的データの分布の基礎。標準化の理解にも役立ちます。
- 仮説検定の基礎 — 有意水準・p値・信頼区間など、クラスター後の群比較を読むための土台。
- 主成分分析とは? — クラスタリング前の次元縮約に使う手法。主成分得点を軸に群分けへつなげられます。(★No.229で公開直前HTML化済=PCA公開/同時公開時に最優先で復活し双方向リンク化)
- 標準偏差と分散とは? — 距離・標準化の土台となるばらつきの理解。(★ドラフトメモは公開済。HEAD確認しliveなら復活)
- 信頼性分析(クロンバッハのα)とは? — 尺度のまとまり(内的整合性)を評価する。
- クラスター分析ができるSPSS製品 — やりたい分析からSPSS製品・オプションを選べる製品選定ページです。
- SPSSとは?研究・実務で使われる統計解析ソフトをやさしく解説 — 製品の全体像・価格・購入方法。
- SPSSの使い方シリーズ(全10回) — 起動・データ準備・分析・出力結果の解釈まで体系的に学べます。
つまずきやすいポイントと注意点
クラスター分析でつまずきやすいポイントを、ここで整理しておきます。
1. 標準化を忘れる。距離に基づく手法なので、単位の異なる変数を混ぜるときは標準化が前提です。標準化を忘れると、スケールの大きい変数だけでクラスターが決まってしまいます。
2. クラスター数を統計だけで決めてしまう。デンドログラムの切れ目や複数kの比較に加え、「分けて意味があるか」という実質的な判断を必ず併用します。
3. 距離・結合法の選択を報告しない。距離や結合法を変えると結果が変わります。どれを使ったかは結果の一部であり、論文・報告に明記します。
4. k-means法の結果が安定しないのに放置する。k-means法は初期値で結果が変わることがあります。複数回実行する、初期値を工夫するなどで安定性を確認します。
5. クラスター分析と因子分析を取り違える。対象(ケース)を分類したいのか、変数の構造を知りたいのか、目的を最初に決めましょう。まとめる対象が逆です。

