分析手法 完全ガイド

クラスカル・ウォリス検定とは?3群以上の差をノンパラメトリックで調べる方法からSPSSでのやり方までやさしく解説

読了の目安約14分 難易度はじめての方OK 最終更新2026.07.02

みなさん、こんにちは。スマート・アナリティクスの畠です。 「3つのクラスのテスト点数を比べたいのですが、データの分布がゆがんでいて、分散分析を使ってよいか不安です」——研究でデータをまとめる時期になると、こうしたご相談をよくいただきます。3群以上の平均を比べる代表的な方法は一元配置分散分析(ANOVA)ですが、ANOVAには正規性などの前提条件がありましたよね。データの分布が大きく偏っている、外れ値がある、アンケートの5段階評価のような順序尺度のデータである、1群あたりの人数がとても少ない——そんなときに頼りになるのが、今回ご紹介するクラスカル・ウォリス検定です。クラスカル・ウォリス検定は、データの値そのものではなく「順位」を使って3群以上の差を調べる、ノンパラメトリック検定の代表的な方法です。このページでは、検定の考え方、H統計量の仕組み、有意になった後の事後比較、効果量、そしてSPSSでの実行の流れまで、初学者の方にもわかりやすく順番に解説します。

畠 慎一郎
畠 慎一郎 スマート・アナリティクス株式会社 代表取締役 統計解析ソフトの提供と分析のサポートを通じて、研究や学習でデータ分析につまずく場面をたくさん見てきました。このガイドでも、わかりにくいところをやさしく解説していきます。
このページの要点
  • クラスカル・ウォリス検定は、対応のない3群以上の差を「順位」に基づいて調べるノンパラメトリック検定。一元配置分散分析(ANOVA)のノンパラメトリック版にあたる
  • 正規性が満たされない・順序尺度のデータ・サンプルサイズが小さい、といった場面で検討する
  • 全データをまとめて順位づけし、群ごとの順位和からH統計量を計算。Hは自由度(群の数−1)のカイ二乗分布で近似される
  • 有意になっても「どの群とどの群に差があるか」はわからない。Bonferroni調整付きのDunn検定などの事後比較で確認する
  • 標本が小さいときは漸近有意確率だけでなく、厳密検定(Exact検定)の利用も検討する
  • p値だけでなく効果量(ε²やη²H)も併せて報告すると、レポートの説得力が上がる

クラスカル・ウォリス検定とは何か

クラスカル・ウォリス検定とは、対応のない3群以上の差を、順位に基づいて調べるノンパラメトリック検定です。提案した2人の統計学者(クラスカルさんとウォリスさん)の名前にちなんでいて、検定統計量の記号からKruskal-WallisのH検定と呼ばれることもあります。

たとえば、次のような場面で使われます。

  • 3つのクラスで数学テストの点数の傾向に差があるか(ただし点数の分布が大きく偏っている)
  • 3つの部活動で1週間の練習時間に差があるか(人数が少なく、外れ値もある)
  • 3つのグループ間で「授業満足度(5段階評価)」のようなアンケート回答に差があるか

「3群以上の差を調べる」と聞くと、一元配置分散分析(ANOVA)を思い浮かべる方も多いと思います。実際、クラスカル・ウォリス検定は、一元配置分散分析のノンパラメトリック版と呼ばれます。ANOVAが各群の「平均」を比べるのに対し、クラスカル・ウォリス検定はデータの値を「順位」に置き換えて、群ごとの順位の偏りを比べます。

ノンパラメトリック検定という言葉が出てきました。少しだけ補足しますね。統計の検定には、データが正規分布に従うことなどを前提にする「パラメトリック検定」と、そうした分布の形をあまり仮定しない「ノンパラメトリック検定」があります。t検定やANOVAは前者、今回のクラスカル・ウォリス検定やマン・ホイットニーのU検定は後者の代表です。

実は、この対応関係はとてもきれいに整理できます。2群の比較で「t検定のノンパラメトリック版」がU検定だったように、3群以上の比較で「ANOVAのノンパラメトリック版」がクラスカル・ウォリス検定です。U検定を学んだ方なら、「あれの3群以上バージョンなんだな」と考えていただくのが、いちばんの近道だと思います。

ここがポイント
2群比較:t検定 ⇔ マン・ホイットニーのU検定。3群以上の比較:一元配置分散分析(ANOVA) ⇔ クラスカル・ウォリス検定。この「パラメトリックとノンパラメトリックの対応表」を頭に入れておくと、手法選びで迷わなくなります。

もうひとつ大切なのは、クラスカル・ウォリス検定が調べているのは「平均の差」そのものではない、ということです。順位を使うため、正確には「群ごとの分布の位置(値の大きさの傾向)にずれがあるか」を調べています。各群の分布の形が似ていれば「中央値の差の検定」とみなせますが、分布の形が大きく違う場合には、解釈に少し注意が必要です。このあたりは後半の「つまずきやすいポイント」でもう一度ふれます。

いつ使うか:分散分析(ANOVA)との使い分け

クラスカル・ウォリス検定を使うのは、分散分析の前提条件が満たしにくいときや、データが順序尺度のときです。具体的には、次の3つの場面が代表的です。

場面1:正規性が満たされないとき

一元配置分散分析には、各群のデータが正規分布に近いことという前提(正規性)がありました。ヒストグラムを描いてみたら分布が大きく偏っていた、極端な外れ値がある、シャピロ・ウィルク検定で正規性が強く疑われた——そんなときには、順位に基づくクラスカル・ウォリス検定が選択肢になります。順位に変換してしまえば、外れ値も「いちばん大きい値」という順位情報に置き換わるので、極端な値の影響を受けにくくなるのです。分布の形の確認については、正規分布のガイドもあわせてご覧ください。

場面2:順序尺度のデータのとき

「とても満足・満足・どちらでもない・不満・とても不満」のような5段階評価は、順序には意味があるものの、間隔が等しいとは言い切れない順序尺度のデータです。研究のアンケートでグループ間の回答傾向を比べたい、という場面はとても多いですよね。こうした順序尺度のデータで3群以上を比べるときに、クラスカル・ウォリス検定はよく検討されます。

場面3:サンプルサイズが小さいとき

1群あたり数人〜10人程度しかデータが集められなかった、ということも、学生の研究では珍しくありません。サンプルサイズが小さいと、正規性の確認自体がむずかしく、ANOVAの結果の信頼性にも不安が残ります。そうした場合に、分布の仮定がゆるいクラスカル・ウォリス検定(さらに後述の厳密検定)が頼りになります。

ANOVAとの対応関係を表に整理しておきます。

一元配置分散分析(ANOVA)クラスカル・ウォリス検定
分類パラメトリック検定ノンパラメトリック検定
比べるもの各群の平均各群の順位の偏り(分布の位置)
主な前提独立性・正規性・等分散性独立性(分布の形の仮定はゆるい)
向くデータ間隔・比率尺度で正規分布に近い順序尺度/偏った分布/小標本/外れ値あり
検定統計量F値H統計量(カイ二乗近似)
事後比較Tukey HSD・BonferroniなどBonferroni調整付きDunn検定など

ここで、「では正規性が少しでも怪しければ、いつもクラスカル・ウォリス検定にすればよいのでは?」と思った方もいるかもしれません。実は、そう単純でもないのです。データが正規分布に近く、間隔尺度として扱える場合には、ANOVAの方が検出力(本当に差があるときに差を見つけられる力)が高い傾向があります。順位に変換するということは、「90点と60点の差」も「61点と60点の差」も同じ「1順位の差」になりうる、つまり情報を少し手放すということだからです。どちらを使うかは、データの尺度・分布・サンプルサイズを見て判断しましょう。

検定の仕組み:順位づけとH統計量

クラスカル・ウォリス検定の仕組みは、全データをまとめて順位づけし、群ごとの順位和の偏りを調べるというものです。計算の流れを、小さな例で見てみましょう。

3つの部活動(A・B・C)から3人ずつ、合計9人の「1週間の自主練習時間」を集めたとします。クラスカル・ウォリス検定では、まず群の区別をいったん忘れて、9人全員の値を小さい順に並べ、1位から9位まで順位をつけます。そのうえで、群ごとに順位を合計します。これが順位和です。

9人全員をまとめて順位づけ → 群ごとに順位を合計する ← 練習時間が短い             練習時間が長い → 1A 2B 3A 4A 5C 6B 7C 8B 9C 部活A:1+3+4 = 8 部活B:2+6+8 = 16 部活C:5+7+9 = 21 群ごとの「順位和」が大きく偏っているほど、H統計量は大きくなる
図1:クラスカル・ウォリス検定の考え方。9人をまとめて順位づけすると、部活Aは下位に、部活Cは上位に集まっている。この「順位の偏り」を数値化したものがH統計量。

もし3つの群にまったく差がなければ、各群の順位は「上位も下位もまんべんなく」混ざるはずですよね。9人なら順位の合計は45なので、3人ずつの3群に差がなければ、順位和はそれぞれ15前後に落ち着くはずです。ところが図1の例では、部活Aは8、部活Cは21と、はっきり偏っています。この「もし差がないなら期待される順位和」からのずれを数値化したものが、検定統計量Hです。

H統計量は、次の式で計算されます(Nは全データ数、kは群の数、Rjは群jの順位和、njは群jのデータ数です)。

H = 12 ÷ { N(N+1) } × Σ( Rj² ÷ nj ) − 3(N+1)

式を暗記する必要はありません。押さえてほしいのは、各群の順位和が「差がない場合の期待値」から離れるほど、Hが大きくなるという性質です。そして、群間に差がないという帰無仮説のもとで、Hは自由度(群の数−1)のカイ二乗(χ²)分布で近似できることが知られています。3群なら自由度2です。SPSSの出力で「検定統計量」の表にカイ二乗・自由度・漸近有意確率が並ぶのは、このためです。

なお、同じ値が複数あるとき(タイ・同順位)は、該当するデータに平均順位を割り当てます。たとえば3位と4位が同じ値なら、両方に3.5位をつけるという考え方です。タイが多い場合には、Hに補正(タイの修正)が入りますが、SPSSが自動で処理してくれるので、計算を心配する必要はありません。順序尺度の5段階評価のようにタイが非常に多いデータでは、こうした補正が行われていることだけ、頭の片隅に置いておいてください。

ここがポイント
クラスカル・ウォリス検定で分かるのは「3群のどこかに差がある」ということまで。ANOVAとまったく同じで、どの群とどの群に差があるかは、事後比較で確認します。この親子関係を覚えておきましょう。

漸近有意確率と厳密検定(Exact検定)

SPSSでクラスカル・ウォリス検定を実行すると、出力に「漸近有意確率」という言葉が出てきます。はじめて見ると戸惑いますよね。心配いりません。順番に説明します。

前の節でお話ししたとおり、H統計量は「カイ二乗分布で近似できる」という性質を使ってp値を計算します。この近似に基づくp値が、漸近有意確率です。「漸近」とは、ざっくり言えば「サンプルサイズが大きくなるほど、近似がどんどん正確になる」という意味です。各群のデータ数が5以上あれば、実用上はこの近似で大きな問題はないとされることが多いです。

では、サンプルサイズがとても小さいときはどうでしょうか。たとえば1群あたり3〜4人しかいない場合、カイ二乗分布による近似は粗くなり、漸近有意確率が実際とずれる可能性があります。そこで登場するのが厳密検定(Exact検定)です。厳密検定は、近似を使わずに、起こりうる順位の並びをすべて(または網羅的に)考えて、正確なp値を直接計算する方法です。

SPSSでは、Exact Testsの機能が使える環境であれば、「正確確率(Exact)」や「モンテカルロ法」によるp値を出力できます。モンテカルロ法は、すべての並びを数え上げる代わりに、無作為なシミュレーションでp値を精度よく見積もる方法で、データ数がやや多くて厳密計算が重い場合に便利です。

  • 各群のデータ数が十分(目安として5以上)→ 漸近有意確率で実用上OK
  • サンプルが小さい・タイが極端に多い → 厳密検定(Exact)の利用を検討
  • 厳密計算が重い → モンテカルロ法という折衷案もある

レポートでは、どのp値を報告したのかを書いておくと丁寧です。「漸近有意確率を報告した」「サンプルが小さいため正確確率を報告した」と一言添えるだけで、読み手の安心感がぐっと増します。

有意になったら:事後比較(Dunn検定など)

クラスカル・ウォリス検定が有意になったとき、次に行うのが事後比較(多重比較)です。ここはANOVAのときと同じ考え方なので、ANOVAのガイドを読んでくださった方にはおなじみの流れだと思います。

検定が有意であっても、それだけでは「3群のどこかに差がある」としか言えません。A組とB組なのか、B組とC組なのか、それともすべての組み合わせなのか——これを確かめるために、群のペアごとの比較を行います。ただし、ペアごとの比較を無調整で繰り返すと、第一種の過誤(本当は差がないのに差があると判断してしまう誤り)が膨らんでしまいます。そこで、多重比較の調整が必要になります。

クラスカル・ウォリス検定の事後比較でよく使われるのは、次の方法です。

Bonferroni調整付きDunn検定

Dunn検定は、順位に基づいてペアごとの比較を行う、クラスカル・ウォリス検定の代表的な事後比較です。比較の繰り返しによる誤りの増加は、Bonferroni法(有意水準を比較回数で割る、またはp値に比較回数を掛ける)で調整するのが定番です。SPSSの新しいノンパラメトリック検定の手順では、クラスカル・ウォリス検定が有意だった場合に、「ペアごとの比較」としてDunn検定に相当する結果(調整済み有意確率付き)を自動で出力してくれます。モデルビューアーの出力で「調整済み有意確率(Adj. Sig.)」の列を見れば、どのペアに差があるかが分かる、というわけです。

ペアごとのマン・ホイットニーU検定+Bonferroni調整

もうひとつの実務的な方法が、ペアごとにマン・ホイットニーのU検定を行い、有意水準をBonferroni法で調整するやり方です。3群なら比較は3回なので、有意水準5%を3で割って、各比較は約1.7%(0.05÷3≒0.0167)で判定します。考え方が分かりやすい反面、比較回数が増えると判定が厳しくなりやすい(保守的になる)点には注意してください。

どちらの方法でも大切なのは、「調整をしてから判断する」ことです。無調整のU検定を3回行って「2つのペアで有意でした」と書いてしまうのは、いちばん多い失敗パターンです。多重比較の考え方そのもの(なぜ調整が必要か、Bonferroni以外にどんな方法があるか)は、多重比較のガイドでくわしく解説しています。

多重比較とは?検定の繰り返しで起きる問題と使い分けのガイド

効果量(ε²・η²H)の意味と報告のしかた

クラスカル・ウォリス検定でも、p値だけでなく効果量を報告することが推奨されるようになってきました。p値は「差が偶然とは考えにくいか」を教えてくれますが、「差がどれくらい大きいか」までは教えてくれないからです。

クラスカル・ウォリス検定でよく使われる効果量には、ε²(イプシロン二乗)や、H統計量から求めるη²H(イータ二乗)があります。どちらも「群の違いがデータ全体のばらつきをどの程度説明するか」を0〜1の範囲で表すもので、計算式は次のとおりです(Hは検定統計量、kは群の数、Nは全データ数です)。

ε² = H × (N+1) ÷ (N²−1)
η²H = (H − k+1) ÷ (N − k)

解釈の目安は、ANOVAのη²と同じ感覚で、おおよそ次のように使われることが多いです。

効果量の値(ε²・η²Hの目安)解釈の目安
.01程度小さい効果
.06程度中程度の効果
.14程度大きい効果

ただし、この基準はあくまで一般的な目安です。研究分野やデータの性質によって意味合いは変わりますので、「目安と照らすとこの程度」という書き方にとどめるのが安全です。SPSSの標準出力には、これらの効果量が直接表示されない場合があります。その場合は、出力されたH(カイ二乗値)・群の数・データ数を使って、上の式で手計算すれば大丈夫です。電卓でできる計算なので、心配いりません。

レポートでは、たとえば次のように記述できます。

3つの部活動の自主練習時間の差を検討するため、クラスカル・ウォリス検定を行った。その結果、群間の差は有意であった、H(2) = 7.20, p = .027, ε² = .26。Bonferroni調整付きの事後比較の結果、部活Cは部活Aよりも有意に練習時間が長かった。

H値(カイ二乗値)・自由度・p値・効果量・事後比較の結果をセットで書く——この型を覚えておけば、そのまま使えます。

SPSSでの実際の操作は「使い方」シリーズで
本ガイドは考え方の解説です。SPSS画面での具体的な操作手順は連載でていねいに紹介しています。
SPSSの使い方シリーズ →

SPSSでの実行方法

ここでは、SPSSでクラスカル・ウォリス検定を行う基本的な流れを紹介します。実際の画面操作や細かい設定は、SPSSの使い方シリーズで詳しく扱いますので、ここでは全体像をつかんでください。

ステップ1:メニューからノンパラメトリック検定→独立したサンプルを開く

「分析」→「ノンパラメトリック検定」→「独立したサンプル」

SPSSでクラスカル・ウォリス検定を行うには、メニューから上のように進みます。この手順では、データの特徴に応じた検定をSPSSが提案してくれる「目的」ベースの画面が開きます。なお、昔ながらの画面に慣れている方は、「分析」→「ノンパラメトリック検定」→「過去のダイアログ」→「K個の独立サンプル」からも実行できます。こちらでは「Kruskal-Wallis H」にチェックを入れます。どちらの経路でも、結果は同じクラスカル・ウォリス検定です。

ステップ2:検定変数(検定フィールド)とグループ変数の指定

「フィールド」タブで、比較したい変数(テスト点数・練習時間・満足度など)を検定フィールドに、グループ分けの変数(クラス・部活動・グループなど)をグループに指定します。ここで1つ注意があります。検定フィールドに入れる変数の尺度設定が「名義」になっていると、意図した検定が選ばれないことがあります。データの定義で、検定したい変数は「スケール」または「順序」に、グループ変数は「名義」に設定されているかを確認しておきましょう。

ステップ3:オプションの設定(記述統計・四分位)

「設定」タブの「検定のカスタマイズ」で「クラスカル・ウォリスの一元配置分散分析(k標本)」を選ぶと、検定方法を自分で指定できます。このとき、複数比較(事後比較)の方法として「すべてのペアごと」を選んでおくと、有意だった場合のペア比較が自動で出力されて便利です。また、過去のダイアログから実行する場合は、「オプション」ボタンで記述統計と四分位にチェックを入れておきましょう。ノンパラメトリック検定の結果報告では、平均値よりも中央値と四分位範囲を示すのが一般的なので、ここで出力しておくと後がラクになります。

ステップ4:結果の解釈(カイ二乗値・自由度・漸近有意確率)と事後比較

出力では、まず各群の中央値・四分位・データ数を確認し、どの群が高い傾向にあるのかを把握します。次に検定統計量の表で、カイ二乗値(H)・自由度・漸近有意確率を読みます。漸近有意確率が .05 未満であれば、「少なくともどこかの群に差がある」と判断します。そして、新しい手順で実行した場合は、モデルビューアーをダブルクリックして「ペアごとの比較」を表示し、調整済み有意確率の列で、どのペアに有意差があるかを確認します。サンプルが小さい場合には、Exact検定のp値もあわせて確認すると安心です。SPSSの具体的な画面操作は「SPSSの使い方」シリーズでくわしく解説しています。

クラスカル・ウォリス検定と関連の深い分析手法・SPSSでの具体的な実装手順を以下にまとめます。研究設計や論文執筆の参考にあわせてご活用ください。

つまずきやすいポイントと注意点

クラスカル・ウォリス検定でつまずきやすいポイントを、ここで整理しておきます。

1. 「中央値の検定」と言い切ってよいかは、分布の形しだい。クラスカル・ウォリス検定は、厳密には「群ごとの分布の位置のずれ」を調べる検定です。各群の分布の形(ばらつきや偏りの具合)がだいたい似ている場合には「中央値の差の検定」と解釈できますが、分布の形が群ごとに大きく違う場合は、中央値が同じでも有意になることがあります。結果を書くときは、ヒストグラムや箱ひげ図で各群の分布を確認したうえで、「分布の位置に差があった」「分布の形が近いことを確認したうえで中央値の差と解釈した」のように、丁寧に表現しましょう。

2. 有意になったのに、事後比較をせずに結論を書いてしまう。クラスカル・ウォリス検定が有意でも、分かるのは「どこかに差がある」ことだけです。「C群がいちばん高かった」と平均順位だけを見て結論づけず、必ずBonferroni調整付きの事後比較で、どのペアに有意差があるかを確認しましょう。

3. 事後比較の調整を忘れる。ペアごとにU検定を繰り返すとき、有意水準を調整しないまま判定してしまうのは、いちばん多い失敗です。3群なら0.05÷3≒0.0167で判定する(またはp値を3倍して0.05と比べる)ことを忘れないでください。SPSSの自動出力の「調整済み有意確率」を使えば、この心配はありません。

4. 対応のあるデータに使ってしまう。クラスカル・ウォリス検定は、対応のない(独立した)3群以上のための検定です。同じ学生が3つの条件すべてを経験しているような対応のあるデータには、フリードマン(Friedman)検定を使います。「群が独立か、同じ対象の繰り返しか」は、手法選びの最初に必ず確認しましょう。

5. 報告に平均値だけを書いてしまう。順位に基づく検定なので、結果の報告には平均値よりも中央値(と四分位範囲)が適しています。記述統計の表には、各群のデータ数・中央値・四分位範囲を載せるのがおすすめです。

6. 正規性が少しでも怪しいと、反射的にこちらを選んでしまう。サンプルサイズがある程度大きければ、ANOVAは正規性のずれにわりと頑健です。やみくもにノンパラメトリックへ逃げるのではなく、分布・尺度・サンプルサイズを確認して、検出力とのバランスで選ぶようにしましょう。

よくある質問

Qクラスカル・ウォリス検定と分散分析(ANOVA)の違いは何ですか?
どちらも3群以上の差を調べる検定ですが、ANOVAは各群の平均を比べるパラメトリック検定で、正規性や等分散性を前提とします。クラスカル・ウォリス検定はデータを順位に変換して分布の位置のずれを調べるノンパラメトリック検定で、分布の形の仮定がゆるい代わりに、正規分布に近いデータではANOVAより検出力が低い傾向があります。
Qどんなときにクラスカル・ウォリス検定を選べばよいですか?
代表的なのは、正規性が満たされない(分布が大きく偏っている・外れ値がある)とき、5段階評価のような順序尺度のデータのとき、サンプルサイズが小さくて正規性の確認自体がむずかしいとき、の3つです。データが正規分布に近く間隔尺度として扱えるなら、検出力の高い一元配置分散分析をまず検討します。
Q有意になった後の事後比較には何を使えばよいですか?
Bonferroni調整付きのDunn検定が定番です。SPSSの「ノンパラメトリック検定」→「独立したサンプル」の手順なら、有意だった場合にペアごとの比較(調整済み有意確率付き)が自動で出力されます。ペアごとにマン・ホイットニーのU検定を行い、有意水準をBonferroni法で調整する方法もよく使われます。
Q効果量は何を報告すればよいですか?
ε²(イプシロン二乗)またはη²H(H統計量から求めるイータ二乗)を報告するのが一般的です。どちらもH値・群の数・全データ数から手計算できます。解釈の目安は.01程度で小、.06程度で中、.14程度で大とされることが多いですが、分野によって基準は変わるため、p値とあわせて慎重に解釈します。
Q対応のあるデータで3群以上を比べたいときはどうすればよいですか?
同じ対象者が3つ以上の条件すべてを経験しているような対応のあるデータには、クラスカル・ウォリス検定ではなくフリードマン(Friedman)検定を使います。フリードマン検定は、反復測定分散分析のノンパラメトリック版にあたる手法です。SPSSでは「ノンパラメトリック検定」→「対応サンプル」から実行できます。
Q2群だけの比較なら、マン・ホイットニーのU検定でよいですか?
はい、2群ならマン・ホイットニーのU検定を使うのが一般的です。クラスカル・ウォリス検定を2群に適用することも理論上は可能で、結果はU検定とほぼ対応しますが、2群比較として設計されたU検定をそのまま使う方が自然で、報告もしやすくなります。
Q漸近有意確率と厳密有意確率はどちらを見ればよいですか?
各群のデータ数が十分(目安として5以上)あれば、カイ二乗近似に基づく漸近有意確率で実用上問題ありません。1群あたりのデータ数がそれより小さい場合や、同順位(タイ)が極端に多い場合は、近似が粗くなるため、厳密検定(Exact)やモンテカルロ法によるp値の利用を検討してください。報告ではどのp値を使ったかを明記すると丁寧です。
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