分析手法 完全ガイド

パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の違いとは?正規性・順位による検定の使い分けをやさしく解説

読了の目安約14分 難易度はじめての方OK 最終更新2026.07.02

みなさん、こんにちは。スマート・アナリティクスの畠です。 「t検定とマン・ホイットニーのU検定、結局どちらを使えばよいのでしょうか?」——量的研究を始めて間もない方から、本当によくいただく質問です。教科書には「正規性が満たされない場合はノンパラメトリック検定を」と書いてありますよね。でも、自分のデータが「正規性を満たしている」のかどうか、どう確かめればよいのか。そして満たしていなかったら本当にt検定は使ってはいけないのか。このあたりで足が止まってしまう方がとても多いのです。心配いりません。このページでは、パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の違いを根本から整理したうえで、「どの検定とどの検定が対応しているのか」の対応表と、正規性・等分散性・標本サイズ・尺度の水準から判断する手順を、初学者の方にもわかりやすく順番に解説します。読み終わるころには、自分のデータでどちらを選べばよいか、自信を持って判断できるようになるはずです。

畠 慎一郎
畠 慎一郎 スマート・アナリティクス株式会社 代表取締役 統計解析ソフトの提供と分析のサポートを通じて、研究や学習でデータ分析につまずく場面をたくさん見てきました。このガイドでも、わかりにくいところをやさしく解説していきます。
このページの要点
  • パラメトリック検定は「母集団が正規分布などの分布に従う」と仮定する検定、ノンパラメトリック検定は分布を仮定せず主に順位を使う検定
  • 主要な対応関係は4つ:対応のないt検定↔U検定、対応のあるt検定↔ウィルコクソンの符号付き順位検定、一元配置分散分析↔クラスカル・ウォリス検定、Pearson↔Spearmanの相関係数
  • 使い分けの判断材料は「尺度の水準」「正規性」「等分散性」「標本サイズ」の4つ
  • 前提が満たされるなら、検出力(差を見つける力)が高いパラメトリック検定が第一候補
  • 正規性は検定(Shapiro-Wilk)だけで機械的に決めず、ヒストグラムやQ-Qプロットとあわせて判断する
  • SPSSでは正規性の確認からU検定まで、メニュー操作で一連の流れを実行できる

パラメトリック検定とは何か

パラメトリック検定とは、母集団が正規分布などの特定の分布に従うと仮定して行う検定の総称です。

「パラメトリック(parametric)」という言葉は、「パラメータ=母数」から来ています。母数とは、母集団の平均や分散のように、母集団の分布の形を決める値のことです。パラメトリック検定は、「母集団はこういう形の分布をしているはずだ」という仮定を置いたうえで、その母数(多くの場合は平均)について検定を行います。

代表的なパラメトリック検定には、次のようなものがあります。

たとえば、「2つのクラスで数学テストの平均点に差があるか」をt検定で調べる場面を考えてみましょう。このときt検定は、「各クラスの背後にある母集団では、点数が正規分布に従っている」と仮定しています。テストの点数や身長・体重のように、平均のまわりに左右対称に値が散らばるタイプのデータでは、この仮定は比較的成り立ちやすいといえます。身長のヒストグラムを描くと、平均付近が最も多く、極端に高い人・低い人ほど少なくなる釣り鐘型になりますよね。これが正規分布の典型的な形です。分布の形そのものについては、正規分布のガイドでくわしく解説しています。

パラメトリック検定の強みは、仮定が成り立つ場面では検出力が高いことです。検出力とは、「本当に差があるときに、その差をきちんと見つけられる力」のことです。同じデータ量なら、仮定を活かせるぶん、パラメトリック検定のほうが差を検出しやすいのです。この点はあとの第7章でくわしく説明します。

ここがポイント
パラメトリック検定は「母集団の分布の形について仮定を置く」検定です。仮定を置くぶん、その仮定が成り立つ場面では効率よく差を見つけられます。逆に言えば、仮定が大きく崩れている場面では、結果の信頼性が下がる可能性がある——これが使い分けの出発点です。

ノンパラメトリック検定とは何か

ノンパラメトリック検定とは、母集団の分布を仮定せず、主にデータの順位を使って行う検定です。

「ノン(non)」がついている通り、パラメトリック検定が置いていた「母集団は正規分布に従う」といった分布の仮定を置きません。そのため「分布によらない検定(distribution-free test)」と呼ばれることもあります。

では、分布を仮定しないで、どうやって差を調べるのでしょうか。多くのノンパラメトリック検定が使うのが、順位(ランク)です。データの値そのものではなく、「全体の中で何番目に大きいか」という順位に置き換えてから、グループ間で順位の偏りがあるかを調べます。

たとえば、2つのグループのデータをすべて混ぜて小さい順に並べ、1位、2位、3位…と順位をつけたとします。もし2つのグループに本当に差がなければ、上位にも下位にも両グループが同じように混ざるはずですよね。ところが、一方のグループばかりが上位に集まっていたら、「このグループのほうが値が大きい傾向がある」と考えられます。これが、代表的なノンパラメトリック検定であるマン・ホイットニーのU検定の基本的な発想です。

順位に置き換えることには、大きな利点が2つあります。

1つめは、外れ値の影響を受けにくいことです。たとえば、研究の実験で反応時間を測定していて、1人だけ極端に時間のかかった人がいたとします。値そのものを使う平均は、この1人に大きく引っぱられてしまいます。しかし順位に置き換えれば、その人は「いちばん遅かった人」という情報に変換されるだけなので、極端さの影響が抑えられます。

2つめは、順序尺度のデータにも使えることです。アンケートでよく使う「1:まったく当てはまらない〜5:とても当てはまる」のような5段階評価は、大小の順序はあるものの、1と2の間隔と4と5の間隔が等しいとは限らないデータです。このような順序尺度のデータでは、そもそも平均を計算すること自体に慎重になる必要があり、順位に基づくノンパラメトリック検定が候補になります。

ここがポイント
ノンパラメトリック検定の合言葉は「値ではなく順位」。分布の形を仮定しないかわりに、データを順位に変換して比べます。外れ値に強く、順序尺度にも使える——このメリットと、次章以降で説明する「検出力がやや低い」というデメリットを天秤にかけて選ぶことになります。

主要な検定の対応表:どちらを選ぶか

ここがこのページの中核です。実は、よく使う検定には、パラメトリック版とノンパラメトリック版がペアで存在します。つまり、「何を調べたいか」が決まれば候補は2つに絞られ、あとはデータの状態を見てどちらか一方を選ぶだけなのです。主要な対応関係を表にまとめます。

調べたいことパラメトリック検定ノンパラメトリック検定
対応のない2群の差
(例:A組とB組の点数)
対応のないt検定マン・ホイットニーのU検定
対応のある2群の差
(例:同じ学生の学習前後の点数)
対応のあるt検定ウィルコクソンの符号付き順位検定
3群以上の差
(例:3種類の勉強法の比較)
一元配置分散分析(ANOVA)クラスカル・ウォリス検定
2変数の関連の強さ
(例:勉強時間と点数の関係)
Pearsonの積率相関係数Spearmanの順位相関係数

この表は、ぜひ手元に置いておいてください。レポートで検定を選ぶとき、まず「自分は何を調べたいのか」を左の列で確認し、次にデータの状態に応じて真ん中か右の列を選ぶ、という2段階で考えると迷いません。

それぞれのペアについて、少し補足します。

対応のないt検定 ↔ マン・ホイットニーのU検定

別々の人からなる2つのグループを比べる場面のペアです。t検定は平均の差を、U検定は順位の偏り(分布の位置のズレ)を調べます。たとえば「文系学部と理系学部で統計テストの点数に差があるか」のような比較です。正規性が満たせない場合や順序尺度の場合に、U検定が代替候補になります。

対応のあるt検定 ↔ ウィルコクソンの符号付き順位検定

同じ人を2回測定したデータ(対応のあるデータ)のペアです。たとえば「同じ学生の、統計の講義を受ける前と後の理解度テストの点数」です。対応のあるt検定は前後の差の平均がゼロかどうかを調べますが、その「差の値」が正規分布から大きく外れている場合には、差を順位に置き換えるウィルコクソンの符号付き順位検定を検討します。

一元配置分散分析(ANOVA) ↔ クラスカル・ウォリス検定

3つ以上のグループを比べる場面のペアです。たとえば「3種類の勉強法でテスト点数に差があるか」です。ANOVAは平均と分散を使うパラメトリック検定で、正規性や等分散性の前提があります。前提が大きく崩れる場合や順序尺度の場合には、全データを順位に置き換えて調べるクラスカル・ウォリス検定が代替候補になります。詳しくは分散分析(ANOVA)のガイドもあわせてご覧ください。

Pearsonの積率相関係数 ↔ Spearmanの順位相関係数

2つの変数の関連を調べる場面のペアです。Pearsonの相関係数は「直線的な関係」の強さを測ります。一方Spearmanの順位相関係数は、両方の変数を順位に置き換えてから相関を計算するため、直線でなくても「一方が増えればもう一方も増える」という単調な関係であれば捉えられますし、外れ値にも強くなります。相関分析のガイドでは、相関係数の読み方を基礎から解説しています。

データの尺度は? 量的(間隔・比率) 順序尺度(5段階評価など) 正規性は満たせそう? ノンパラメトリック検定 U検定・クラスカル・ウォリス等 はい いいえ・判断が難しい パラメトリック検定 t検定・ANOVA・Pearson 標本サイズは十分? 十分大きい 小さい ロバスト性も考慮しつつ両論検討(第7章) ノンパラメトリック検定が安全
図1:検定を選ぶ判断フロー。尺度の水準→正規性→標本サイズの順に確認していくと、候補が自然に絞り込まれる。
ここがポイント
「どちらを選ぶか」は、①尺度の水準(量的か順序か)→②正規性→③標本サイズ、の順で考えます。順序尺度ならノンパラメトリック、量的データなら正規性と標本サイズを確認してから判断——この流れを覚えておけば、ほとんどの場面で迷いません。

判断基準①:正規性の確認(Shapiro-Wilk・Q-Qプロット・ヒストグラム)

使い分けの最初の関門が、正規性の確認です。正規性とは、データ(正確にはその背後の母集団)が正規分布に近い形をしているか、ということです。確認方法は大きく3つあり、必ず複数を組み合わせて判断することをおすすめします。

方法1:ヒストグラムで形を見る

いちばん基本的で、いちばん大切な方法です。データのヒストグラムを描いて、左右対称の釣り鐘型に近いかを目で確認します。山が2つある、極端に左右どちらかに裾を引いている、外れ値がぽつんと離れている——こうした特徴は、ヒストグラムを見ればすぐにわかります。テストの点数なら、満点近くに張りつく「天井効果」や、0点付近に集まる「床効果」がないかも確認しましょう。

方法2:正規Q-Qプロットで直線性を見る

正規Q-Qプロットは、「データが正規分布に従っているなら点が一直線に並ぶ」ように作られたグラフです。点が対角線にほぼ沿っていれば正規分布に近く、両端が直線から大きく反り返っていれば、裾の重い分布や歪んだ分布の可能性があります。ヒストグラムよりも、分布のズレを細かく確認できるのが利点です。

方法3:Shapiro-Wilk検定・Kolmogorov-Smirnov検定

正規性そのものを検定にかける方法です。帰無仮説は「母集団は正規分布に従う」で、p値が有意水準(通常5%)を下回ると「正規分布からのズレが統計的に有意」と判断されます。標本サイズが小さめのときはShapiro-Wilk検定がよく使われます。

ただし、ここで注意してほしいことがあります。正規性の検定は、標本サイズに強く影響されるのです。標本が小さいと、実際にはかなり歪んだ分布でも有意になりにくく(ズレを検出する力が足りない)、逆に標本が数百、数千と大きいと、実用上は無視できるほどのわずかなズレでも有意になってしまいます。ですから、「Shapiro-Wilkで有意だったから機械的にノンパラメトリック」と決めるのではなく、ヒストグラムとQ-Qプロットでズレの程度と性質を自分の目で確かめることが大切です。

検定結果を絶対視しない
正規性の検定は「補助輪」です。p値だけを見て自動的に判断するのではなく、グラフ(ヒストグラム・Q-Qプロット)→検定(Shapiro-Wilk)→標本サイズ、の3点セットで総合的に判断しましょう。論文でも「ヒストグラムとShapiro-Wilk検定により正規性を確認した」のように、複数の根拠を書くのが丁寧です。

判断基準②:等分散性の確認(Leveneの検定)

対応のないt検定や分散分析には、正規性に加えてもうひとつ、等分散性という前提があります。等分散性とは、比較するグループ同士で、データのばらつき(分散)がだいたい等しいことです。

たとえば、A組とB組のテスト点数を比べるとき、A組は60〜80点に集中しているのに、B組は20〜100点まで大きく散らばっている——このような状態だと、分散が等しいという前提が崩れている可能性があります。ばらつきの指標である分散・標準偏差そのものについては、標準偏差と分散のガイドで基礎から解説しています。

等分散性の確認には、Leveneの検定がよく使われます。帰無仮説は「各群の分散は等しい」で、p値が有意水準を下回ると「分散が等しいとは言えない」と判断されます。

では、Levene検定が有意になったら、すぐにノンパラメトリック検定に切り替えるべきでしょうか。実は、そうではありません。等分散性が崩れた場合には、ノンパラメトリックに行く前に、等分散性を仮定しないパラメトリック検定という選択肢があります。

  • 2群の比較なら:Welchのt検定(SPSSのt検定の出力には「等分散を仮定しない」行として最初から表示されています)
  • 3群以上の比較なら:Welchの分散分析(一元配置分散分析のオプションで選択できます)

つまり、「等分散性が崩れた=ノンパラメトリック」と短絡しないことが大切です。正規性はおおむね問題ないが分散だけ違う、という場面では、Welchの方法でパラメトリックの枠内のまま対応できることが多いのです。

ここがポイント
等分散性の崩れには「Welchの方法」、正規性の崩れには「ノンパラメトリック検定」。どの前提が崩れているかによって対処法が違う、と整理しておくとすっきりします。

判断基準③:尺度の水準と標本サイズ

正規性・等分散性とならぶ判断材料が、データの尺度の水準標本サイズです。

尺度の水準:そのデータは「平均」を計算してよいか

統計で扱うデータには、名義尺度(血液型・所属学部など)、順序尺度(5段階評価・成績の順位など)、間隔尺度(テストの素点・温度など)、比率尺度(身長・反応時間など)という水準があります。パラメトリック検定は平均や分散を使うため、原則として間隔尺度以上の量的データが対象です。

アンケートの5段階評価のような順序尺度は、「4と5の差」と「1と2の差」が同じ大きさとは限らないため、平均の計算自体に慎重さが求められます。1項目だけの5段階評価を2群で比べるなら、U検定などのノンパラメトリック検定が自然な選択です。ただし、複数の項目を合計した尺度得点(たとえば10項目の合計点)は、実務上、量的データとして扱われることも多くあります。研究では、指導教員の方針や分野の慣習も確認してみてください。

なお、名義尺度(カテゴリ)のデータで「人数の偏り」を調べたい場合は、平均の比較ではなく度数の検定、つまりカイ二乗検定の系統になります。

標本サイズが小さいとき

標本サイズが小さい(目安として各群10〜15人未満)ときは、判断がいちだんと難しくなります。理由は2つあります。第一に、ヒストグラムを描いてもデータが少なすぎて分布の形がわからない。第二に、正規性の検定も検出力不足で、歪んだ分布を見逃しやすい。つまり、「正規性が満たされているか確認しようがない」状態になりやすいのです。

このような場合、分布の仮定に頼らないノンパラメトリック検定は安全側の選択肢になります。一方で、「過去の研究や理論から、この変数は正規分布に近いとわかっている」場合(身長や多くの心理尺度得点など)には、小標本でもt検定を使うことは十分に合理的です。標本が小さいときの選択は、データだけでなくその変数についての事前知識もあわせて判断する、と覚えておいてください。

ロバスト性と検出力:迷ったときの考え方

ここまで読んで、「結局、少しでも正規性が怪しければノンパラメトリックにしておけば安全では?」と思った方もいるかもしれません。気持ちはよくわかります。ですが、話はそれほど単純ではありません。鍵になるのが、ロバスト性検出力という2つの考え方です。

ロバスト性:t検定は意外と頑丈

ロバスト性とは、前提条件が多少崩れても、検定の結果が大きくは狂わない性質のことです。実は、t検定や分散分析は、正規性のズレに対してかなりロバストであることが知られています。

その理由のひとつが、中心極限定理です。中心極限定理とは、ざっくり言えば「元のデータの分布がどんな形でも、標本サイズが大きくなれば、標本平均の分布は正規分布に近づいていく」という定理です。t検定が実際に使っているのは個々のデータではなく標本平均なので、標本サイズがある程度大きければ(目安として各群30程度以上)、元の分布が多少歪んでいても、検定としてはおおむね正しく機能するのです。

ですから、「Shapiro-Wilk検定が有意になった。もうt検定は使えない」と考える必要はありません。標本サイズが十分にあり、歪みが極端でなければ、t検定は実用上問題なく使えることが多いのです。

検出力:パラメトリック検定が一般に有利

一方で、ノンパラメトリック検定を選ぶことにもコストがあります。それが検出力の低下です。検出力とは、本当に差があるときに、検定がその差を正しく「有意」と判定できる確率のことです。

ノンパラメトリック検定は、値を順位に置き換える際に「どれくらい離れているか」という量的な情報を捨てています。情報を捨てるぶん、同じデータなら一般にパラメトリック検定より差を見つけにくくなります。正規性が成り立っている理想的な条件では、U検定の検出力はt検定の95%程度とされます。逆に、分布の歪みや外れ値が深刻な場面では、ノンパラメトリック検定のほうがむしろ差を見つけやすくなることもあります。

まとめると、迷ったときの考え方はこうです。

  • 前提がおおむね満たせる→検出力で有利なパラメトリック検定を使う
  • 順序尺度・極端な歪み・外れ値・小標本→安全側のノンパラメトリック検定を使う
  • 等分散性だけが崩れている→Welchの方法でパラメトリックの枠内で対応する
ここがポイント
「ノンパラメトリック=いつでも安全な上位互換」ではありません。仮定が成り立つならパラメトリック検定のほうが差を見つける力(検出力)で有利。ノンパラメトリックは「分布に頼れない場面の頼れる代替手段」と位置づけるのが正確です。
SPSSでの実際の操作は「使い方」シリーズで
本ガイドは考え方の解説です。SPSS画面での具体的な操作手順は連載でていねいに紹介しています。
SPSSの使い方シリーズ →

SPSSでの実行方法

ここでは、SPSSで「正規性の確認→検定の選択→実行」までを進める基本的な流れを、対応のない2群の比較(t検定/U検定)を例に紹介します。実際の画面操作や細かい設定は、SPSSの使い方シリーズで詳しく扱いますので、ここでは全体像をつかんでください。

ステップ1:正規性の検定(Shapiro-Wilk・Kolmogorov-Smirnov)

「分析」→「記述統計」→「探索的」

従属変数リストに調べたい数値変数(テスト点数など)、因子リストにグループ変数を入れます。「作図」ボタンで「正規性の検定とプロット」にチェックを入れると、Shapiro-Wilk検定・Kolmogorov-Smirnov検定の結果と正規Q-Qプロットが、グループごとに出力されます。あわせてヒストグラムも出力し、分布の形を目で確認しましょう。判断のポイントは第4章の通りです。p値だけでなく、グラフと標本サイズをあわせて総合的に判断します。

ステップ2:等分散性の検定(Leveneの検定)

2群の比較では、Leveneの検定はt検定の出力に自動で含まれるので、事前の操作は不要です。3群以上の場合は、一元配置分散分析のオプションで「等分散性の検定」にチェックを入れます。Levene検定が有意(分散が等しいとは言えない)の場合は、2群ならWelchのt検定(出力の「等分散を仮定しない」行)、3群以上ならWelchの分散分析を使います。

ステップ3:パラメトリック検定の実行(t検定の場合)

「分析」→「平均と比率の比較」→「独立したサンプルのt検定」

検定変数に数値変数、グループ化変数にグループの変数を指定し、グループの定義で2つの群の値を入力します。出力では、まずLevene検定の結果を確認し、等分散が仮定できれば上の行(等分散を仮定する)、できなければ下の行(等分散を仮定しない=Welch)のt値・自由度・p値を読みます。レポートには「t(58) = 2.31, p = .024」のような形式で、効果量(Cohenのdなど)とあわせて報告します。

ステップ4:ノンパラメトリック検定の実行(U検定の場合)と結果の解釈

「分析」→「ノンパラメトリック検定」→「独立サンプル」

正規性が満たせないと判断した場合は、マン・ホイットニーのU検定に切り替えます。フィールドに検定変数とグループ変数を指定して実行すると、U統計量とp値が出力されます。p値が.05未満なら、「2つのグループの分布の位置に統計的に有意な差がある」と解釈します。このとき、平均値ではなく中央値や順位の情報を中心に報告するのがノンパラメトリック検定の作法です。たとえば「Mann-WhitneyのU検定の結果、両群の得点に有意な差が見られた(U = 124.5, p = .031)。中央値はA群72点、B群64点であった」のように記述します。SPSSの具体的な画面操作は「SPSSの使い方」シリーズでくわしく解説しています。

パラメトリック検定・ノンパラメトリック検定の使い分けと関連の深い分析手法・SPSSでの具体的な実装手順を以下にまとめます。研究設計や論文執筆の参考にあわせてご活用ください。

つまずきやすいポイントと注意点

パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の使い分けで、初学者の方がつまずきやすいポイントを整理しておきます。

1. 正規性の検定だけで機械的に決めない。Shapiro-Wilk検定が有意=即ノンパラメトリック、ではありません。正規性の検定は標本サイズの影響を強く受けます。大標本ではわずかなズレでも有意になり、小標本では大きなズレも見逃します。必ずヒストグラム・Q-Qプロットとあわせて、ズレの「程度」を目で確認してください。

2. 等分散性の崩れとノンパラメトリックを混同しない。等分散性だけが崩れている場合の第一候補は、U検定ではなくWelchのt検定(またはWelchの分散分析)です。「どの前提が崩れているか」によって対処が違う、と整理しましょう。

3. ノンパラメトリック検定の結果に平均値を添えて終わらせない。順位に基づく検定を使ったのに、報告は平均値だけ——という記述をよく見かけます。U検定やクラスカル・ウォリス検定を使った場合は、中央値(と四分位範囲)を中心に報告するのが一貫した書き方です。

4. 対応の有無を取り違えない。同じ人を2回測ったデータ(前後比較など)に「対応のない」検定を使うのは典型的な誤りです。対応のあるデータには、対応のあるt検定またはウィルコクソンの符号付き順位検定を使います。「同じ対象をくり返し測定しているか?」を最初に必ず確認しましょう。

5. 検定の多重実行をしない。「t検定とU検定を両方やって、有意になったほうを報告する」のは絶対に避けてください。複数の検定を試して都合のよい結果だけを選ぶと、第一種の過誤(本当は差がないのに差があると判断する誤り)が増えてしまいます。検定は、データを見る前に立てた方針に従って、原則1つに決めて実行します。

6. 「ノンパラメトリック=前提なし」と思い込まない。分布の形こそ仮定しませんが、ノンパラメトリック検定にも「各データが独立であること」などの前提はあります。また、U検定で「中央値の差」と単純に解釈するには、両群の分布の形が似ていることが望ましい、という細かい条件もあります。万能の方法ではないことを覚えておいてください。

よくある質問

Q正規性が満たされていないときは、必ずノンパラメトリック検定を使うべきですか?
必ずではありません。t検定や分散分析は中心極限定理のおかげで正規性のズレにかなりロバストで、標本サイズが各群30程度以上あれば、多少の歪みは実用上問題にならないことが多いです。歪みが極端な場合、外れ値が深刻な場合、標本が小さい場合に、ノンパラメトリック検定を検討します。
Q検出力が低いとは、どういう意味ですか?
検出力とは、本当に差があるときに検定がその差を正しく「有意」と判定できる確率のことです。検出力が低いと、実際には差があるのに「有意差なし」という結果になりやすくなります。ノンパラメトリック検定は値を順位に置き換える際に量的な情報を捨てるため、前提が満たされる条件下では、一般にパラメトリック検定より検出力がやや低くなります。
Q標本サイズが小さいときは、ノンパラメトリック検定が必須ですか?
必須ではありません。標本が小さいと正規性の確認自体が難しいため、分布を仮定しないノンパラメトリック検定は安全側の選択になります。ただし、身長や確立された心理尺度のように、過去の研究から正規分布に近いとわかっている変数であれば、小標本でもt検定を使うことは合理的です。データと事前知識の両方で判断します。
Q対応のない検定と対応のある検定は、どう見分ければよいですか?
「同じ対象をくり返し測定しているか」で見分けます。A組とB組のように別々の人を比べるなら対応のないデータで、対応のないt検定またはU検定を使います。同じ学生の学習前後の点数のように、同じ人を2回測定しているなら対応のあるデータで、対応のあるt検定またはウィルコクソンの符号付き順位検定を使います。
QShapiro-Wilk検定で有意になったら、パラメトリック検定は使えませんか?
使えないわけではありません。Shapiro-Wilk検定は標本サイズが大きいと、実用上無視できる程度のわずかなズレでも有意になります。検定結果だけで決めず、ヒストグラムやQ-Qプロットでズレの程度を確認し、標本サイズも考慮して判断してください。歪みが軽微で標本が十分なら、t検定や分散分析を使うことは一般に問題ありません。
QPearsonの相関係数とSpearmanの相関係数は、どちらを使えばよいですか?
両方の変数が量的データで、関係が直線的、外れ値も深刻でなければPearsonの積率相関係数を使います。順序尺度(5段階評価など)を含む場合、関係が直線とは限らないが単調ではある場合、外れ値の影響が心配な場合は、順位に基づくSpearmanの順位相関係数を使います。散布図を描いて関係の形を確認してから選ぶのがおすすめです。
Q5段階評価のアンケートは、どちらの検定を使えばよいですか?
1項目だけの5段階評価は順序尺度なので、U検定やクラスカル・ウォリス検定などのノンパラメトリック検定が自然な選択です。一方、複数項目を合計・平均した尺度得点は、実務上は量的データとして扱い、正規性を確認したうえでt検定や分散分析を使うことも広く行われています。所属分野の慣習や指導教員の方針もあわせて確認してください。
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