分析手法 完全ガイド

重回帰分析とは?決定係数・多重共線性(VIF)の見方までやさしく解説

読了の目安約12分 難易度複数の要因で結果を説明したい方向け 最終更新2026.07.02

みなさん、こんにちは。スマート・アナリティクスの畠です。 「ストレス得点に効いているのは、睡眠時間なのか、運動の頻度なのか、それとも年齢なのか——複数の要因を同時に検討したい」。研究データを前にすると、こうした問いに必ず出会います。1つの結果変数(従属変数)を、複数の説明変数でまとめて予測・説明したいときに使うのが、今回ご紹介する重回帰分析(multiple regression analysis)です。t検定や分散分析が「群の間の差」を扱うのに対し、回帰分析は「変数と変数の関係」を式の形でモデル化します。このページでは、単回帰と重回帰の違い、使う前に確認したい前提条件、決定係数R²・調整済みR²・偏回帰係数の読み方、多重共線性(VIF)の確認方法、変数選択法の考え方、そして論文での報告例までを、研究で使う知識として順番にやさしく解説していきます。

畠 慎一郎
畠 慎一郎 スマート・アナリティクス株式会社 代表取締役 統計解析ソフトの提供と分析のサポートを通じて、研究や学習でデータ分析につまずく場面をたくさん見てきました。このガイドでも、わかりにくいところをやさしく解説していきます。
このページの要点
  • 重回帰分析とは、1つの結果変数(従属変数)を複数の説明変数で予測・説明するモデルを作る手法。現実の現象はほぼ常に複数の要因に影響されるため、研究での活用範囲がとても広い
  • モデル全体の説明力は決定係数R²で読む。ただし重回帰では、説明変数の数を補正した調整済みR²を報告するのが基本
  • 各説明変数の影響は偏回帰係数で読む。元の単位で解釈するB(非標準化係数)と、変数間の比較に使うβ(標準化係数)の2つを使い分ける
  • 説明変数どうしが強く相関する多重共線性があると、係数の推定が不安定になる。VIFで必ず確認する(10以上は対処を検討、という慣例的な目安がある)
  • 変数の投入方法は強制投入(Enter)が研究の標準。ステップワイズ法は再現性などの問題が指摘されており、使う場合は探索的分析と明示する
  • 論文では、N・投入方法・前提確認(正規性・VIF)・F値と調整済みR²・各変数のβとp値をセットで報告する

重回帰分析とは何か(相関分析との違い)

回帰分析(regression analysis)は、1つの結果変数を、他の変数(説明変数)で予測・説明するモデルを作る分析手法です。そのうち、説明変数を2つ以上使うものを重回帰分析と呼びます。たとえば「睡眠時間・運動頻度・年齢から、ストレス得点をどの程度説明できるか」「学習時間・出席率・事前テストの得点から、期末試験の得点を予測できるか」といった問いに答えられます。

相関分析との違いは、「方向性」と「予測式」にあります。相関は2つの変数の対称な関連の強さを1つの係数で表すのに対し、回帰は「説明変数 → 従属変数」という向きを決め、予測式そのものを推定します。

比較の観点相関分析回帰分析
変数の役割2変数は対称(どちらが説明側かを問わない)説明変数 → 従属変数(向きがある)
出力関連の強さ(相関係数1つ)予測式(係数 × 変数 + 定数)
扱える変数の数基本は2変数の組(多変数は相関行列)説明変数を複数投入できる
主な目的関連の確認予測・各要因の寄与の把握

重回帰分析の中心にあるのが、次の回帰方程式です。

y = β₀ + β₁x₁ + β₂x₂ + … + βₖxₖ + ε
(y:従属変数/x₁…xₖ:説明変数/β₀:切片/β₁…βₖ:偏回帰係数/ε:誤差項)
ここがポイント
重回帰は「ある説明変数が1単位増えると、他の変数を一定に保ったとき、従属変数がどれだけ変わるか」を定量化します。この「他の変数を一定に保ったとき」という条件つきの読み方が、単純な相関との大きな違いです。なお、相関係数を二乗すると単回帰の決定係数R²と一致するなど、両者は数学的にも深くつながっています。

単回帰と重回帰の違い

回帰分析は、説明変数の数によって2つのタイプに分かれます。

種類説明変数の数主な用途
単回帰(simple regression)1個2変数の関係を直線でモデル化する
重回帰(multiple regression)2個以上複数の要因の同時の影響をモデル化する
単回帰 重回帰 説明変数 x 従属変数 y 睡眠時間 x₁ 運動頻度 x₂ 年齢 x₃ ストレス得点 (従属変数 y) β₁ β₂ β₃
図1:単回帰(左)は説明変数1つ、重回帰(右)は複数の説明変数の同時の影響をモデル化する。各矢印につく偏回帰係数βが「他の変数を一定に保ったときの影響の大きさ」を表す。

研究で実際によく使われるのは重回帰のほうです。理由はシンプルで、現実の現象はほぼ常に複数の要因に影響されるからです。ストレス得点なら、睡眠だけでなく運動・年齢・環境要因などが同時に効いている可能性があり、1変数ずつの単回帰を繰り返すだけでは、要因どうしの重なりを分離できません。重回帰は、他の変数の影響を統計的に調整したうえで、各要因の固有の寄与を見せてくれます。

使う前に確認したい前提条件

重回帰分析を正しく使うには、次の5つの前提条件を意識します。

  • 線形性:説明変数と従属変数の関係がおおむね直線的である
  • 独立性:観測値が互いに独立している(同じ人の繰り返し測定などが混ざっていない)
  • 誤差の正規性:残差(予測値と実測値の差)がおおむね正規分布に従う
  • 等分散性:残差のばらつきが予測値の大小によらず一定である
  • 多重共線性がない:説明変数どうしが強く相関しすぎていない

確認の方法は、線形性と等分散性は残差プロットの目視、誤差の正規性は残差のヒストグラムや正規P-Pプロット正規分布の考え方が土台になります)、多重共線性は後述のVIFによる数値の確認が基本です。

前提が大きく崩れているとき
関係が直線的でない場合は変数の変換(対数など)や二乗項の追加、誤差の正規性が大きく崩れる場合は従属変数の変換や一般化線形モデルへの切り替え、多重共線性が強い場合は変数の整理(後述)を検討します。前提の確認を飛ばしたまま実行すると、係数の解釈が信頼できないものになりかねません。

モデル全体の評価(決定係数R²と調整済みR²)

重回帰の出力を読むときは、まず「モデル全体がどれだけ説明できているか」から確認します。その中心が決定係数R²です。R²は、従属変数のばらつきのうちモデルが説明できた割合を表し、0〜1の値をとります。たとえばR²=0.36なら「ストレス得点のばらつきの36%を、投入した説明変数で説明できた」と読みます。

ただし、重回帰では「調整済みR²」を使うのが基本です。R²は説明変数を増やすほど機械的に上がってしまう性質があるため、変数の数を補正した調整済みR²のほうが、モデルどうしの比較や論文での報告に適しています。

「R²がいくつなら十分か」については、絶対的な基準はありません。0.3前後でも意味のある知見になる分野もあれば、より高い説明力が期待される文脈もあります。同じ分野の先行研究で報告されているR²と比べて、自分のモデルの説明力を相対的に評価するのがおすすめです。

あわせて、出力の「分散分析」の表でモデル全体のF検定を確認します。ここのp値が小さければ「投入した説明変数のうち、少なくとも1つは従属変数の説明に寄与している」と判断できます(仮説検定の基礎の考え方がそのまま使われています)。

偏回帰係数の読み方(Bとβ・p値)

モデル全体を確認したら、次は各説明変数の影響を「係数」の表で読みます。ここには2種類の係数が並びます。

係数意味使いどころ
非標準化係数 B説明変数が1単位増えると、他の変数を一定に保ったとき、従属変数がBだけ変わる元の単位での解釈(例:睡眠時間が1時間増えるとストレス得点がB点下がる)
標準化係数 βすべての変数を標準化したうえでの係数単位の異なる説明変数どうしの、相対的な影響の大きさの比較

各係数にはp値がついています。p値が小さい変数は「従属変数の説明に寄与している証拠がある」と読み、p値が大きい変数は「このデータからは寄与を示せなかった」と読みます。

ここに注意
p値だけで変数の重要度を判断しないでください。サンプルサイズが大きい研究では、実質的な影響がごく小さくてもp値は小さくなりがちです。βの絶対値(影響の大きさ)とp値(有意性)の両方を見て総合的に解釈します。この「有意性と大きさは別もの」という考え方は、効果量の議論とまったく同じです。
あわせて読む
「有意かどうか」と「どのくらい大きいか」の役割分担は、効果量(effect size)のガイドで詳しく解説しています。R²やβは回帰分析における効果量としての顔も持っています。

多重共線性とVIFの確認

多重共線性(multicollinearity)とは、説明変数どうしが強く相関している状態のことです。これがあると偏回帰係数の推定が不安定になり、「本来は重要なはずの変数が有意にならない」「係数の符号が理論的な予想と逆になる」といった不可解な結果が起こりやすくなります。

多重共線性の確認には、VIF(Variance Inflation Factor:分散拡大係数)を使います。多くの統計ソフトで、回帰の出力オプションとして計算できます。

VIFの値読み方(慣例的な目安)
5未満多重共線性の心配は小さい
5〜10やや注意(許容されることも多いが慎重に)
10以上多重共線性が疑われる(対処を検討する)

この「5」や「10」という数字は、分野や教科書によって扱いが異なるおおまかな慣例で、絶対的な基準ではありません。とはいえ、VIFが大きい変数をそのままにして係数を解釈するのは危険です。疑われる場合は、次のような対処を検討します。

  • 相関の強い変数の一方を外す——もっとも簡単で、解釈も明快です。
  • 複数の変数を合成する——内容的に重なる変数は、合計得点や主成分にまとめてから投入します。
  • 正則化回帰(リッジ回帰など)を使う——変数をどうしても全部残したい場合の発展的な選択肢です。
あわせて読む
重なりの大きい変数群を少数の合成変数にまとめる方法は、主成分分析のガイドで解説しています。多重共線性への対処としても使われる手法です。

変数選択法(強制投入・ステップワイズ)

重回帰では、説明変数をどのようにモデルへ入れるかについて、いくつかの方法があります。代表的な4つを比べてみましょう。

方法仕組み研究での位置づけ
強制投入(Enter)指定した変数をすべて同時に投入する理論・仮説に基づく研究の標準
ステップワイズ統計的基準で変数を自動的に出し入れする再現性などの問題が指摘され、近年は非推奨とされることが多い
前進法(Forward)寄与の大きい変数から1つずつ追加するステップワイズと同様の問題を共有する
後退法(Backward)全変数から寄与の小さいものを除いていく探索的な分析の補助として使われることがある

ステップワイズ法が慎重に扱われるのは、方法論の議論のなかで、同じデータでも投入の順序しだいで結果が変わりうること、p値が歪みやすいこと、別のデータで同じ変数が選ばれるとは限らないこと(再現性の低さ)などが指摘されてきたためです。

ここがポイント
仮説に基づいて変数を選んだ研究では、強制投入を第一選択にするのが安全です。ステップワイズ系の方法をどうしても使う場合は、論文に「探索的分析として実施した」と明示し、結果の解釈も慎重に行いましょう。

論文での報告例

重回帰分析の結果は、論文ではおおむね次のような形で記述します。そのまま雛形として使えるように書いてみます。

「ストレス得点を従属変数とし、睡眠時間・運動頻度・年齢を説明変数とする重回帰分析を実施した(強制投入法、N = 150)。残差の正規性はP-Pプロットにより確認した。VIFはいずれも2.5未満であり、多重共線性は認められなかった。モデルは統計的に有意であり(F(3, 146) = 28.4, p < .001, 調整済みR² = .36)、睡眠時間(β = −.42, p < .001)と運動頻度(β = −.31, p = .002)がストレス得点に有意な負の関連を示した。一方、年齢の関連は有意ではなかった(β = .08, p = .31)。」

報告に含めたい要素は次のとおりです。

  • Nと投入方法(強制投入か、探索的な方法か)
  • 前提条件の確認結果(残差の正規性、VIF)
  • モデル全体のF値・自由度・p値・調整済みR²
  • 各説明変数のβとp値(Bと標準誤差を併記できるとなおよい)
  • 可能であれば各係数の95%信頼区間
重回帰分析の設計・解釈に迷ったら
「変数の選び方はこれでいい?」「VIFが大きい変数をどう扱う?」——他の手法のガイドもあわせてご覧ください。研究の場面に合わせてご活用いただけます。
分析手法ガイド一覧へ →

ツール・実行(概要)

重回帰分析は、多くの統計ソフトで標準的に実行できます。SPSSでは「分析 → 回帰 → 線型」から、従属変数と説明変数を指定し、統計量のオプションで推定値・モデルの適合度・共線性の診断(VIF)にチェックを入れて実行するのが基本の流れです。具体的な画面操作と出力の見方は、SPSSでの回帰分析のやり方(操作手順ページ)や「SPSSの使い方」シリーズで詳しく解説しています。

重回帰分析と関連の深い分析手法・SPSSでの具体的な実装手順を以下にまとめます。研究計画や論文執筆の参考にあわせてご活用ください。

つまずきやすいポイントと注意点

重回帰分析でつまずきやすいポイントを、ここで整理しておきます。

1. R²をそのまま報告してしまう。R²は説明変数を増やすだけで上がる性質があります。重回帰では調整済みR²を報告し、モデル比較にも調整済みR²を使います。

2. VIFを確認せずに係数を解釈する。多重共線性があると、係数の大きさや符号が不安定になります。共線性の診断は毎回の必須チェックにしましょう。

3. p値だけで変数の重要度を語る。Nが大きいと小さな影響でも有意になります。βの大きさとp値の両方を見て解釈します。

4. 有意だからと因果関係を主張する。回帰分析が示すのはあくまで関連です。観察データから因果を主張するには、研究デザインや交絡の検討が別に必要です。

5. 説明変数の数に対してサンプルが少なすぎる。経験則として説明変数1つあたり10〜20ケースが目安とされます(これも分野により幅のある慣例です)。少なすぎると係数の推定が不安定になり、結果の一般化も難しくなります。

よくある質問

QR²と調整済みR²は、どちらを論文に書けばよいですか?
重回帰では調整済みR²を書くのが標準です。R²は説明変数を増やすだけで機械的に上がるため、モデルの比較には向きません。単回帰では両者がほぼ一致するので、どちらを書いても実質的な違いはほとんどありません。
Q性別や職業などのカテゴリ変数を説明変数に入れられますか?
入れられます。カテゴリ変数はダミー変数(0/1の2値変数)に変換してから投入します。3カテゴリ以上の場合は「カテゴリ数−1」個のダミー変数を作り、残りの1つを基準カテゴリとします。係数は「基準カテゴリと比べた差」として解釈します。
Q重回帰分析にはどのくらいのサンプルサイズが必要ですか?
経験則として、説明変数1つにつき10〜20ケースが目安とされます。説明変数が5つならN=50〜100程度です。ただしこれは分野により幅のある慣例で、検出したい効果の大きさから検出力分析で見積もるのがより丁寧な方法です。
QBとβはどちらを報告すべきですか?
両方を報告するのが理想です。B(非標準化係数)は元の単位での解釈に、β(標準化係数)は単位の異なる変数どうしの相対的な影響の比較に使えます。論文ではBと標準誤差、βを併記する形がよく使われます。
Qステップワイズ法はなぜ推奨されないのですか?
方法論の議論のなかで、同じデータでも投入順序で結果が変わりうること、p値が歪みやすいこと、別のデータで再現されにくいことなどが指摘されてきたためです。仮説に基づく研究では強制投入を第一選択とし、ステップワイズ系を使う場合は探索的分析と明示するのが安全です。
QVIFはいくつまでなら大丈夫ですか?
「10以上で対処を検討、5以上でやや注意」という慣例的な目安が広く使われていますが、絶対的な基準ではなく、分野や教科書によって扱いが異なります。VIFが大きい場合は、相関の強い変数の一方を外す、変数を合成する、正則化回帰を使うなどの対処を検討します。
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