分析手法 完全ガイド

ロジスティック回帰とは?オッズ比・予測確率・分類の精度からSPSSでのやり方までやさしく解説

読了の目安約15分 難易度回帰の基礎を学んだ方向け 最終更新2026.07.02

みなさん、こんにちは。スマート・アナリティクスの畠です。 「再入院する/しない、合格/不合格のように、結果が『あり・なし』の2択なんです。どの要因が効いているかを回帰で調べたいのですが、重回帰でいいのでしょうか?」——研究データをまとめる時期になると、こうしたご相談をよくいただきます。重回帰分析は、テストの点数や売上のような量的な結果を予測する手法でした。けれども現実の研究では、結果そのものが「起こる/起こらない」の2値であることがとても多いですよね。そんなときに頼りになるのが、今回ご紹介するロジスティック回帰(logistic regression)です。ロジスティック回帰は、2値の結果が「起こる確率」を、複数の説明変数から予測・説明する回帰分析です。各要因の効果をオッズ比という解釈しやすい指標で示せるのが大きな魅力で、医療・疫学・社会科学をはじめ幅広い分野で使われています。このページでは、なぜ重回帰では2値を扱えないのか、オッズ比とロジットの考え方、係数と予測確率の読み方、分類表による精度、適合度の評価、そして必要なサンプルサイズの目安まで、順番にやさしく解説していきます。

畠 慎一郎
畠 慎一郎 スマート・アナリティクス株式会社 代表取締役 統計解析ソフトの提供と分析のサポートを通じて、研究や学習でデータ分析につまずく場面をたくさん見てきました。このガイドでも、わかりにくいところをやさしく解説していきます。
このページの要点
  • ロジスティック回帰は、結果(アウトカム)が2値(あり/なし、発症する/しないなど)のときに、その起こる確率を複数の説明変数から予測・説明する回帰分析
  • 重回帰のように確率を直線で予測するのではなく、確率をロジット(対数オッズ)に変換して直線でモデル化する。だから予測確率は必ず0〜1に収まる
  • 係数βは最小二乗法ではなく最尤法で推定する。係数を変換したオッズ比 Exp(B)が解釈の中心
  • 予測確率にしきい値を設けると各ケースを分類でき、分類表・感度・特異度・的中精度でモデルの当てる力を確認する
  • 適合度は尤度比検定・Hosmer-Lemeshow検定(有意でないほうが当てはまり良)・疑似R²で評価する
  • 必要数は総数より少ないほうのアウトカムのイベント数が効く。古典的目安は「1変数あたりイベント10件(EPV≧10)」

ロジスティック回帰とは何か

ロジスティック回帰とは、結果(アウトカム)が2値――あり/なし、発症する/しない、合格/不合格など――のときに、その「起こる確率」を複数の説明変数から予測・説明する回帰分析です。重回帰分析が量的な結果(点数・売上など)を予測するのに対し、ロジスティック回帰は「1(起こる)になる確率 p」をモデル化します。

研究では、二値アウトカムの要因分析にきわめて広く使われます。たとえば「どの要因が再入院の有無に関連するか」「複数の指標から合否をどれだけ説明できるか」といった問いに対し、各要因の効果をオッズ比という解釈しやすい指標で示せるのが大きな利点です。

仕組みの要点は、確率そのものではなく、確率をロジット変換した量を直線(線型結合)でモデル化することです。

ロジット: log( p / (1 − p) ) = β₀ + β₁x₁ + β₂x₂ + … + βₖxₖ

ここで、左辺の p / (1 − p)オッズ(起こる見込みと起こらない見込みの比)、その対数 log(オッズ)ロジット(対数オッズ)です。そして係数βは、重回帰のような最小二乗法ではなく、最尤法(maximum likelihood)で推定します。観測されたデータが最も得られやすくなるように係数を決める、という考え方です。

ここがポイント
ロジスティック回帰は「確率を直接、直線で予測する」のではなく、「対数オッズを直線で予測する」モデルです。この一手間のおかげで、予測確率は必ず0〜1に収まります。

なお、ロジスティック回帰は1948年に始まったフラミンガム研究(心疾患のコホート研究)の流れの中で発展した、医療・疫学の現場発の手法です。発症には連続量だけでなく「既往あり/なし」のようなカテゴリ変数も関わり、それらから発症の有無を説明する必要があったことが背景にあります。こうした出自を知っておくと、使いどころのイメージがつかみやすくなります。

なぜ重回帰では2値の結果を扱えないのか

二値アウトカム(0/1)に重回帰(線型回帰)をそのまま当てはめると、いくつもの不都合が生じます。

  • 予測値が0未満や1超になりうる——確率として解釈できない値が出てしまいます。
  • 誤差が正規分布せず、等分散にもならない——0/1のデータでは重回帰の前提が成り立ちません。

ロジスティック回帰は、ロジット変換によってこれらの問題を回避し、予測値が常に0〜1の確率になるように設計されています。直線がS字(ロジスティック)曲線に置き換わる、とイメージするとわかりやすいと思います。

直線回帰(0〜1をはみ出す) 1 0 >1 <0 ロジスティック曲線(0〜1に収まる) 1 0
図1:直線回帰(左)は予測値が0未満や1超になり確率として読めないのに対し、ロジスティック曲線(右)はS字で必ず0〜1の枠内に収まる。横軸=説明変数、縦軸=アウトカム(確率)。

オッズ・オッズ比・ロジット

ロジスティック回帰を理解するうえで欠かせないのが、オッズ・オッズ比・ロジットの3つの言葉です。

  • オッズ(odds)——ある事象が起こる確率 p と、起こらない確率 (1−p) の比 p/(1−p)。確率が0.5ならオッズは1になります。
  • オッズ比(odds ratio, OR)——2つの条件のオッズの比。説明変数が1単位増えたときに、オッズが何倍になるかを表します。
  • ロジット(logit)——オッズの対数。これが直線でモデル化される量です。

たとえば、ある要因のある群の発病オッズが A/B、ない群が C/D のとき、その比 (A/B)÷(C/D) がオッズ比です。値が大きいほど、その要因が発病と強く関連していると読みます。オッズ比の読み方はとても明快です。

オッズ比(OR)意味
OR = 1その説明変数とアウトカムは関連なし
OR > 1その変数が増えると、アウトカムの起こるオッズが増える(正の関連)
OR < 1その変数が増えると、オッズが減る(負の関連)
ここがポイント
係数βはロジット(対数オッズ)のスケールで出ますが、exp(β)(SPSSの出力では Exp(B))がオッズ比になります。研究報告では、解釈しやすいオッズ比と、その95%信頼区間をセットで示すのが標準です。

係数の符号・大きさの読み方

出力の係数表は、次の3点をおさえると読めます。

  • 係数βの符号が正 → その変数が増えるとアウトカムが起こりやすくなる(OR > 1)
  • 符号が負 → 起こりにくくなる(OR < 1)
  • 絶対値が大きいほど → オッズへの影響が強い

各係数のp値(Waldの検定など)で、その変数の関連が統計的に有意かを判断します。多変量モデルでは、各オッズ比は他の変数を調整したうえでの関連(調整オッズ比)である点に注意してください。「他の条件をそろえたとき、この変数だけが1単位増えると…」という読み方になります。

予測確率の出し方

ロジット(線型結合)からは、次の式で予測確率に戻せます。これはロジスティック関数(シグモイド関数)と呼ばれる形です。

p = 1 / ( 1 + exp( −(β₀ + β₁x₁ + … + βₖxₖ) ) )

この式により、ある説明変数の値の組み合わせに対して「アウトカムが起こる確率」を計算できます。SPSSでは、各ケースの予測確率を新しい変数として保存できるので、個々の対象についてのリスク評価などにも使えます。

分類の精度を見る(分類表・感度・特異度)

ロジスティック回帰は、予測確率にしきい値(たとえば0.5)を設けると、各ケースを「1と予測/0と予測」に分類できます。これを実測と突き合わせた分類表(2×2の分割表)で、モデルの当てる力を確認します。

実測:陽性(1)実測:陰性(0)
予測:陽性(1)A(真陽性)C(偽陽性)
予測:陰性(0)B(偽陰性)D(真陰性)

ここから、医療・疫学でよく使う次の指標を読み取ります。

  • 感度(sensitivity)——実際に陽性のうち、正しく陽性と予測できた割合(A ÷ (A+B))。
  • 特異度(specificity)——実際に陰性のうち、正しく陰性と予測できた割合(D ÷ (C+D))。
  • 陽性反応的中度——陽性と予測したうち、実際に陽性だった割合(A ÷ (A+C))。
  • 陰性反応的中度——陰性と予測したうち、実際に陰性だった割合(D ÷ (B+D))。
  • 的中精度(正分類率)——全体のうち正しく分類できた割合((A+D) ÷ (A+B+C+D))。
ここがポイント
的中精度(全体の正答率)だけを見ると、アウトカムが偏ったデータでは見かけ上高くなることがあります。感度・特異度を併せて確認し、目的に応じてしきい値を調整するのが実務的です。見分ける力の総合評価には、ROC分析(AUC)も有効です。

モデルの当てはまりの評価

モデルがデータにどれくらい当てはまっているかは、主に次の3つで評価します。

  • 尤度比検定(モデル全体の有意性)——説明変数を入れないモデルと比べて、当てはまりが有意に改善したかを見ます。
  • Hosmer-Lemeshow検定——予測リスクの十分位などで対象を分け、観測イベント率と期待イベント率が近いか(較正=calibration が良いか)を評価します。有意でない(p ≥ .05)ほうが当てはまりが良いと解釈する点に注意します。
  • 疑似決定係数(pseudo-R²)——Cox-Snell、Nagelkerke などが参考指標として使われます(重回帰のR²とは意味が異なります)。
ここがポイント
Hosmer-Lemeshow検定は「有意=当てはまりが悪い」という、ふだんの検定と逆向きの読み方になります。間違えやすいので注意してください。

必要なサンプルサイズの考え方(EPV)

ロジスティック回帰では、サンプルの総数だけでなく、少ないほうのアウトカムのイベント数が効きます。経験則として知られるのが、「1変数あたりイベント10件(events per variable, EPV ≧ 10)」という目安です。

  • イベント数は、2つのアウトカムのうち少ないほうの件数で数えます。
  • たとえばイベントが20件なら、信頼して投入できる説明変数はおよそ2つ程度、というのがこの目安の考え方です。
ここがポイント
全体のNが大きくても、少数派のアウトカムが少なければ投入できる変数は限られます。「Nが多いから大丈夫」ではなく、イベント数を基準に変数の数を抑えましょう。近年はより精緻なサンプルサイズ設計法も提案されていますが、EPVは出発点として有用な目安です。
SPSSでの実際の操作は「使い方」シリーズで
本ガイドは考え方の解説です。SPSS画面での具体的な操作手順は連載でていねいに紹介しています。
SPSSの使い方シリーズ →

SPSSでの実行方法

ここでは、SPSSでロジスティック回帰(二項)を行う基本的な流れを紹介します。実際の画面操作や細かい設定はSPSSの使い方シリーズで詳しく扱いますので、ここでは全体像をつかんでください。

ステップ1:メニューから回帰→二項ロジスティックを開く

「分析」→「回帰」→「二項ロジスティック」

SPSSでロジスティック回帰を行うには、メニューから上のように進みます。アウトカム(結果)が2値のときは「二項ロジスティック」を選びます。3カテゴリ以上の場合は「多項ロジスティック」または「順序」を使います。

ステップ2:従属変数と共変量を指定

2値(カテゴリ)のアウトカムを「従属変数」に、説明変数を「共変量」に入れます。共変量には量的変数も質的変数も投入できます。

ステップ3:方法(変数選択法)を選ぶ

「方法」で変数の選び方を指定します。理論的に投入する変数が決まっているなら「強制投入法」、探索的に絞るなら「変数増加法・尤度比」などを選びます。目的に合わせて選びましょう。

ステップ4:カテゴリでダミー化・参照カテゴリを指定

「カテゴリ」ボタンで質的な説明変数を指定し、ダミー変数化します。参照カテゴリ(「最初」または「最後」)を決めると、オッズ比はその基準カテゴリと比べた比として解釈できます。

ステップ5:保存とオプションを設定

「保存」で予測値の「確率」「所属グループ」、残差の「標準化」を出力できます。「オプション」では分類プロットHosmer-Lemeshowの適合度Exp(B)の信頼区間にチェックを入れておくと、解釈に必要な出力がそろいます。

ステップ6:結果の解釈(モデル→適合度→分類→係数の順)

出力は、モデルの有意性(尤度比)→ Hosmer-Lemeshow → 分類表(感度・特異度・的中精度)→ 変数の係数とExp(B)(オッズ比)・その95%信頼区間の順に確認します。各変数のp値で有意性を、Exp(B)で効果の大きさと向きを読み取ります。SPSSの具体的な画面操作は「SPSSの使い方」シリーズでくわしく解説しています。

ロジスティック回帰と関連の深い分析手法・SPSSでの具体的な実装手順を以下にまとめます。研究設計や論文執筆の参考にあわせてご活用ください。

つまずきやすいポイントと注意点

ロジスティック回帰でつまずきやすいポイントを、ここで整理しておきます。

1. 2値の結果に重回帰を当ててしまう。あり/なしのような2値アウトカムに重回帰を使うと、予測確率が0〜1をはみ出したり、前提が崩れたりします。結果が2値ならロジスティック回帰を使いましょう。

2. 係数βをそのままオッズ比として読んでしまう。係数βは対数オッズのスケールです。オッズ比は exp(β)(Exp(B))であり、βそのものではありません。報告するのはオッズ比とその95%信頼区間です。

3. Hosmer-Lemeshowを逆に読んでしまう。この検定は「有意でない(p≥.05)ほうが当てはまりが良い」という、ふだんと逆向きの読み方です。有意だから良い、と誤解しないようにしましょう。

4. 的中精度だけでモデルを評価してしまう。アウトカムが偏ったデータでは、全部を多数派と予測するだけで的中精度が高く見えます。感度・特異度を併せて確認してください。

5. 総数Nだけ見てサンプルサイズを判断してしまう。効くのは少ないほうのイベント数です。「1変数あたりイベント10件(EPV≧10)」を目安に、投入変数の数を抑えましょう。

6. カテゴリ変数をダミー化せずに投入してしまう。質的な説明変数は「カテゴリ」でダミー化し、参照カテゴリを決めて投入します。これを怠ると、オッズ比の解釈ができなくなります。

よくある質問

Q重回帰分析とどう違うのですか?
重回帰は点数や売上のような量的な結果を予測しますが、ロジスティック回帰は2値アウトカム(あり/なしなど)が起こる確率を予測します。係数は最小二乗法ではなく最尤法で推定し、出力の解釈の中心はオッズ比(Exp(B))です。結果が量的なら重回帰、2値ならロジスティック回帰と使い分けます。
Qオッズ比とは何ですか?
説明変数が1単位増えたときに、アウトカムの起こるオッズが何倍になるかを表す指標です。1なら関連なし、1より大きければ正の関連、小さければ負の関連です。SPSSの出力では Exp(B) として表示され、95%信頼区間とあわせて報告するのが標準です。
Q係数が正・負のときはどう読みますか?
係数βが正なら、その変数が増えるとアウトカムが起こりやすくなり(オッズ比>1)、負なら起こりにくくなります(オッズ比<1)。絶対値が大きいほど影響が強くなります。多変量モデルでは、各係数は他の変数を調整したうえでの関連(調整オッズ比)である点に注意します。
Q予測確率はどう求めますか?
ロジット(係数と説明変数の線型結合)をロジスティック関数 p = 1 / (1 + exp(−ロジット)) に通すと、0〜1の予測確率になります。SPSSでは「保存」で各ケースの予測確率を新しい変数として出力できます。
Q感度・特異度・的中精度はどう違いますか?
感度は実際に陽性のうち正しく陽性と当てた割合、特異度は実際に陰性のうち正しく陰性と当てた割合、的中精度は全体の正答率です。的中精度だけだとアウトカムが偏ったデータで見かけ上高くなるため、感度・特異度も併せて見て、目的に応じてしきい値を調整します。
Q質的な説明変数はそのまま入れてよいですか?
カテゴリ変数は「カテゴリ」でダミー変数化して投入します。参照カテゴリ(基準)を決めると、オッズ比はその基準カテゴリと比べた比として解釈できます。ダミー化せずに投入すると、正しく解釈できません。
Q必要なデータ件数の目安はありますか?
少ないほうのアウトカムのイベント数を基準に、1変数あたり10件(EPV≧10)が古典的な目安です。総数Nではなくイベント数で考えます。たとえばイベントが20件なら、投入できる説明変数はおよそ2つ程度が目安になります。
Q結果が3つ以上のカテゴリのときはどうしますか?
アウトカムが3カテゴリ以上のときは、順序がないなら多項ロジスティック回帰、順序があるなら順序ロジスティック回帰を使います。SPSSではそれぞれ「分析」→「回帰」の中に専用のメニューがあります。
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