媒介分析(Mediation Analysis)
効果の「経路」を、直接効果と間接効果に分けて推定する。
媒介分析は、予測変数が結果変数に与える影響のうち、媒介変数を通って伝わる部分を取り出す手法です。SPSS Statistics 32 では標準の手続きとして加わり、直接効果・間接効果・総効果を一つの画面で出力します。
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媒介分析の要点
媒介分析は、予測変数(X)から結果変数(Y)への効果を、媒介変数(M)を通る間接効果と、通らない直接効果に分けて推定する手法です。SPSS Statistics 32 では、変数を予測変数・媒介変数・結果変数に割り当てるだけで、直接効果・間接効果・総効果と交互作用を同じ枠組みで出力します。
- 種別
- 標準の手続き
- 対応バージョン
- SPSS Statistics 32 以降
- メニュー
- 分析 > メディエーション分析
- 向いている分析
- 介入や施策が効く経路の検討
効果を三つの成分に分ける
研修が知識を高め、その知識が成績を高める。このように原因から結果へ至る経路を、推定できる量として表すのが媒介分析です。
媒介モデルの経路図(例:研修 → 知識 → 成績)
| 効果 | 意味 | 例(研修 → 知識 → 成績) |
|---|---|---|
| 直接効果(c′) | 媒介変数を経由せずに、予測変数が結果変数に及ぼす影響 | 知識の向上を介さずに、研修の雰囲気や動機づけが成績に与える影響 |
| 間接効果(a×b) | 媒介変数を経由して伝わる影響。媒介分析で最も注目する量 | 研修が知識を高め、その知識が成績を高めた分 |
| 総効果(c) | 直接効果と間接効果を合わせた、予測変数全体の影響 | 研修が最終的に成績にもたらした影響の合計 |
総効果が同じ大きさでも、内訳の大半が間接効果か直接効果かで、手を入れるべき場所が変わります。
媒介分析で判断できること
回帰分析や分散分析で効果の有無を確かめたあと、その効果がどこを通って生じているかまで踏み込めます。
強化すべき要素が分かる
効果の大半が知識の向上という経路を通っているなら、研修のうち知識を伝える部分を厚くする判断ができます。
理論モデルをデータで確かめる
「X はこういう仕組みで Y に効くはずだ」という仮説モデルを、経路ごとの推定値で検討できます。
打ち消し合う効果を見つける
直接効果と間接効果が逆向きに働くと、総効果は小さく見えます。成分に分けると、この抑制(サプレッション)の構造が見えてきます。
SPSS 32 で、媒介分析が標準の手続きに
画面上の手続き名は「メディエーション分析(媒介分析)」です。これまでは回帰分析を複数回実行して係数を突き合わせたり、Sobel 検定の計算やブートストラップ用のマクロを組み合わせたりして進めていた分析です。SPSS Statistics 32 では、一つの手続きの中で直接効果・間接効果・総効果と交互作用をまとめて推定します。手順をシンタックスとして残せるので、再現と引き継ぎも同じ環境の中で行えます。
SPSS Statistics 32 での分析の流れ
データを準備する
予測変数・媒介変数・結果変数にあたる項目を、同じデータセットにそろえます。
手続きを開く
「分析 > メディエーション分析」を選びます。データビュー上部の検索バーに「媒介」または「Mediation」と入力しても開けます。
変数を割り当てる
各変数を予測変数・媒介変数・結果変数の役割に指定します。共変量も必要に応じて投入します。
設定して実行する
間接効果の信頼区間の推定方法(ブートストラップなど)を指定して実行し、出力ビューアで効果の表を確認します。
ブートストラップで信頼区間を推定するときは、反復回数とケース数に応じた計算時間を見込んでください。
まず間接効果とその信頼区間を見る
出力で最初に確認するのは、間接効果の推定値と信頼区間です。そのうえで直接効果・総効果との関係を読みます。
| 出力の状態 | 読み方 |
|---|---|
| 間接効果の信頼区間が 0 を含まない | 間接効果は 0 と異なると判断できます。予測変数の影響の一部が、媒介変数を通って結果変数に届いていると読めます。 |
| 直接効果が小さく、間接効果が大きい | 完全媒介に近い状態です。結果を動かすには、まず媒介変数に働きかけるのが効率的です。 |
| 直接効果も間接効果も一定の大きさがある | 部分媒介です。媒介変数を通る経路と直接の経路の両方に意味があります。 |
| 総効果は小さいが、直接効果と間接効果はそれぞれ大きく符号が逆 | 抑制(サプレッション)の可能性があります。成分に分けて見ることで初めて分かる構造です。 |
因果の解釈について
媒介分析は、X → M → Y という因果の順序を仮定したうえで効果を分解する手法です。因果として主張できるかどうかは、無作為化や時間順序のそろった縦断データ、交絡の統制といった研究デザインと理論的根拠によって決まります。横断データで行う場合は、仮説モデルの検討として位置づけて報告します。
分野別の使い方
心理学・行動研究
ストレスが心身の不調に与える影響を、睡眠の質を媒介変数として検討します。想定する心理プロセスを経路ごとに確かめられます。
医療・看護・公衆衛生
保健指導が健康アウトカムを改善するとき、その効果が生活習慣の変化を通っているかを確かめます。介入のどの要素に資源を振り向けるかの判断材料になります。
マーケティング
広告接触から購買への影響を、ブランド好意度を媒介変数として分解します。好意度を通じた効果と直接の刺激による効果を切り分け、施策設計の根拠にします。
教育
学習プログラムが成績に与える効果を、学習意欲や学習時間を媒介変数として検討します。プログラムのどこを設計し直すかが見えてきます。
媒介分析と調整(モデレーション)分析
二つはよく並べて語られますが、答える問いが異なります。
媒介変数と調整変数の位置の違い
| 観点 | 媒介分析 | 調整(モデレーション)分析 |
|---|---|---|
| 答える問い | なぜ・どのように効果が伝わるのか | いつ・誰に対して効果が強まる/弱まるのか |
| 着目する変数 | 媒介変数(効果を中継する変数) | 調整変数(効果の強さを左右する変数) |
| 典型例 | 研修 → 知識 → 成績 | 研修の効果が、経験年数によって変わる |
効果の仕組みを知りたいときは媒介分析、効果が現れる条件を知りたいときは調整分析を選びます。両者を組み合わせた調整媒介分析もあります。
よくある質問
媒介変数と交絡変数はどう違いますか?
媒介変数は原因と結果のあいだに位置し、効果を伝える変数です。交絡変数は原因と結果の両方に影響して見かけの関係をつくる変数で、統制の対象になります。媒介変数を交絡変数として統制すると、見たい間接効果の分まで総効果から取り除かれてしまうため、変数の役割はモデルを組む前に理論から決めておきます。
サンプルサイズはどのくらい必要ですか?
間接効果は a と b の積なので分布が偏りやすく、同じ変数の数の回帰分析よりも余裕のあるケース数を確保するのが一般的です。一律の基準はないため、想定する効果量と経路の数をもとに、ブートストラップ信頼区間を前提として検討します。
媒介変数が複数ある場合も分析できますか?
複数の媒介変数を同時に扱う多重媒介モデルでは、経路ごとの間接効果を個別に評価します。SPSS Statistics 32 の手続きで指定できるモデルの範囲は、手続きの仕様とあわせてご相談の際にご案内します。
これまで使っていたマクロは使わなくてよいですか?
基本的な媒介モデルは標準の手続きで扱えます。特殊なモデル指定が必要な場合は、既存のマクロと併用する方法もあります。新しく始める分析は、シンタックスで手順を残せる標準の手続きから始めることをおすすめします。
どのエディションで使えますか?
媒介分析は SPSS Statistics 32 で追加された機能です。お使いのライセンスで利用できるかどうかと、32 へのアップグレード方法は、ご相談の際にご案内します。
媒介分析のご相談
モデルの組み方、変数の役割の決め方、出力の読み方まで、お使いのデータに合わせてご案内します。32 へのアップグレードのご相談も承ります。
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