VARモデル(ベクトル自己回帰)
複数の時系列を、互いの過去の値で同時に説明するモデルです。
SPSS Statistics 32 では、時系列分析にVARモデルの手続きが加わりました。売上・広告費・顧客満足度、GDP・物価・金利のように互いに影響し合う系列を一つのモデルに入れ、影響の向きと時間差を推定できます。
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VARモデルの要点
VARモデル(Vector Autoregressive model)は、複数の時系列それぞれの現在の値を、全系列の過去の値で説明する多変量の時系列モデルです。SPSS Statistics 32 で時系列分析の標準の手続きとして加わり、系列間の相互依存・多変量予測・波及の分析に加えて、因果検定と共積分診断まで一つの手続きで進められます。
- 種別
- 標準の手続き(時系列)
- 対応バージョン
- SPSS Statistics 32 以降
- メニュー
- 分析 > 時系列 > 多変量時系列 > ベクトル自己回帰
- 向いている分析
- 互いに影響し合う複数の系列の予測と波及の分析
「自己回帰」を複数の系列に広げる
自己回帰は、ある時点の値をその変数の過去の値で説明する考え方です。VARモデルはこれを複数の変数に広げ、含めたすべての系列を一つのベクトルとして同時に扱います。
売上・広告費・顧客満足度の例では、今月の売上を先月の売上・先月の広告費・先月の満足度で説明し、広告費と満足度についても同じ形の式を立てます。3本の式を同時に推定するので、どの系列がどの系列を、どの程度の時間差で動かしているかが係数として出てきます。
回帰分析は1つの結果変数を説明しますが、VARモデルでは含めたすべての系列が対等に被説明変数になります。どの系列も、ほかの系列にとって原因にも結果にもなりうる、という前提です。

図1 3系列・ラグ1のVARモデル。各系列の現在の値を、3系列すべての1時点前の値で説明します。
SPSS 32 のVARモデルで分析できること
系列間の相互関係
各指標が時間の経過とともに互いにどう影響し合っているかを、係数の符号と大きさで定量化します。
多変量の予測
関連する系列の情報を取り込んで将来値を予測します。単変量モデルより見通しが良くなる場面があります。
波及の分析
ある系列で起きた変化が、ほかの系列へどの大きさで、どの期間にわたって伝わるかを追跡します。
ARIMA と同じ時系列メニューの中で使えます
SPSS 32 では、1本の系列を追う ARIMA に加えて、複数の系列の絡み合いを読むVARモデルを時系列分析の標準の手続きとして選べます。単変量の予測から多変量の分析まで同じ操作体系で扱え、プロットで系列の構造を確かめられます。
SPSS Statistics 32 での基本の流れ
VARモデルは「分析 > 時系列 > 多変量時系列 > ベクトル自己回帰」から実行します。
データを準備する
分析する複数の時系列を、同じ時点間隔(月次・四半期など)でそろえてデータセットに入れます。日付を定義しておくと出力が読みやすくなります。
定常性を確認する
トレンドを含む系列は、差分や前年同期比などで平均と変動が安定した系列に変換してから使います。非定常な系列どうしの長期的な関係は、共積分診断で確かめます。
系列とラグを指定する
「分析 > 時系列 > 多変量時系列 > ベクトル自己回帰」を開き、含める系列と、何時点前までさかのぼるか(ラグ次数)を指定します。データビュー上部の検索バーに「VAR」または「ベクトル自己回帰」と入力しても開けます。
出力を確認する
係数、予測値と区間、因果検定、共積分診断、プロットで系列間の関係を確認します。
系列の選び方
含める系列は、理論的に互いに関係すると考えられるものに絞ります。VARモデルでは推定する係数の数が「系列数の2乗 × ラグ次数」(定数項を除く)で増えるため、系列を増やすほど観測期間の長さが必要になり、推定も不安定になります。「なぜこの系列を入れるのか」を説明できる範囲に絞ると、結果も読みやすくなります。

出力を読むときの5つの観点
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 係数の符号と大きさ | ある系列の過去の値が、別の系列の現在の値をどの向きに、どの程度動かしているか |
| ラグ次数 | 何時点前までを説明に使うか。AIC・BIC などの情報量規準で候補を比べ、過不足のない次数を選ぶ |
| 予測値と区間 | 点の予測値に加え、予測区間の幅で不確実性を確認する |
| 波及の向きと時間差 | どの系列がどの系列に先行しているか、影響が何時点後に現れるか |
| 共積分診断 | 非定常な系列どうしに長期的に安定した関係(共積分)があるか。差分をとる前処理を選ぶ手がかりにする |
グレンジャー因果性
ある系列の過去の値が、別の系列の予測を改善するかを調べる検定で、SPSS 32 のVARモデルの出力に含まれます。「広告費の動きは売上に先行しているか」といった問いの手がかりになります。ここでいう因果は予測上の先行関係で、メカニズムとしての因果とは区別して解釈します。
インパルス応答
ある系列に一時的なショックが起きたとき、ほかの系列がどの大きさで、何時点にわたって反応するかを時間を追って描きます。金利を動かしたとき物価が何か月後にどう反応するか、といった検討に使います。
図2 インパルス応答の読み方(概念図)。広告費へのショックに対する売上の反応を時点ごとに追います。
分野別の活用例
マクロ経済・政策分析
GDP成長率・インフレ率・金利の動的な関係を調べます。金融政策が経済全体にどう波及するかの検討に使われる、VARモデルの代表的な用途です。
金融市場
株式リターン・金利・為替レートの関係を分析し、ある市場のショックがほかの市場へどう伝わるかをとらえます。リスク管理やポートフォリオ設計の基礎情報になります。
ビジネス・マーケティング
売上・広告支出・顧客満足度を月次や四半期で並べ、広告の効果が何か月後にどの程度売上に現れるか、満足度が売上の先行指標になっているかを検討します。
環境・気候研究
複数の環境指標の時系列的な相互作用を分析します。
ARIMA・回帰分析との違い
| 観点 | ARIMA(単変量) | VARモデル(多変量) | 回帰分析 |
|---|---|---|---|
| 扱う系列 | 基本的に1系列 | 複数系列を同時に | 1つの結果変数と説明変数 |
| 変数間の関係 | モデルに含めない | 相互の影響を明示的にモデル化 | 説明変数 → 結果変数の一方向 |
| 時間の前後関係 | 自身の過去の値 | 全系列の過去の値 | 通常は扱わない |
| 主な用途 | 単一指標の予測 | 相互依存の把握・波及分析・多変量予測 | 要因の影響の大きさの推定 |
予測したい指標がほかの指標とほぼ独立に動くなら ARIMA で足ります。複数の指標が互いに影響し合い、その関係そのものに関心がある場合や、関連指標の情報で予測を改善したい場合はVARモデルを選びます。
よくある質問
VARモデルにはどんなデータが必要ですか?
互いに関連すると考えられる複数の時系列が、同じ時点間隔(月次・四半期など)でそろっている必要があります。推定する係数の数は系列数とラグ次数に応じて増えるため、それに見合う長さの観測期間を用意します。
ラグ次数はどう決めればよいですか?
AIC・BIC などの情報量規準を手がかりに、複数の候補を比べて選ぶのが一般的です。次数を増やしすぎると推定が不安定になり、少なすぎると系列間の関係を取りこぼします。
VARモデルで因果関係は分かりますか?
ある系列が別の系列の予測に役立つかという意味での先行関係を、グレンジャー因果性の検定で確かめられます。これは予測上の関係で、メカニズムとしての因果の証明とは区別して解釈します。
ARIMA とどう使い分ければよいですか?
1つの指標を、その指標自身の過去から予測するなら ARIMA、複数の指標の相互関係や波及に関心がある場合はVARモデルを使います。どちらも「分析 > 時系列」から実行できるため、両方を当てはめて比べることもできます。
どのライセンスで使えますか?
VARモデルは SPSS Statistics 32 以降で利用できます。お使いのエディションやオプションによって利用範囲が変わるため、現在の構成とあわせてご相談の際にご案内します。
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分析したい系列とデータの期間をお知らせいただければ、系列の選び方、前処理、ラグ次数の決め方から、SPSS 32 での実行手順までご案内します。
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