SPSSによるt検定のやり方|独立・対応ありの実行手順と結果の読み方【SPSSの使い方】

- 1. はじめに
- 1.1.1. この記事の目次
- 2. t検定とは何か(分析手法の位置づけ)
- 3. t検定を使う判断基準
- 4. t検定の種類
- 4.1. 独立サンプルのt検定(対応のないt検定)
- 4.2. 対応のある t検定
- 4.3. 対応のない2つのグループの平均値の差の検定~t検定~
- 4.4. はじめにグループの比較を見てみよう。
- 4.5. SPSSによる独立サンプルのt検定の実行
- 4.6. SPSSにおける対応なしの独立サンプルのt検定の出力結果と結果の見方
- 4.7. t検定の結果をどのように解釈し、文章で説明するか
- 4.8. 有意差があっても「差が大きい」とは限らない
- 4.9. t検定でよくある誤解と注意点
- 4.10. 次に学ぶべき分析手法
- 5. SPSSによるt検定でよくある質問
はじめに
t検定とは、2つのグループの平均値に差があるかを、その差が偶然によるものかどうかという観点から検証する統計的仮説検定手法です。
本記事は、IBM SPSS Statistics をはじめて使う方 を対象に、t検定の基本的な考え方から SPSS による実行方法、出力結果の読み方までを「操作と解釈を一体で理解する」 ことを目的としています。
t検定は、統計解析の中でも特に利用頻度が高く、卒業論文・修士論文・学術研究だけでなく、マーケティング施策の効果検証や業務改善の評価など、実務の現場でも広く用いられています。
本記事では、
この記事の目次
- t検定とは何か
- どのような場合に使うのか
- SPSS ではどのように操作するのか
- 出力結果をどのように読み、解釈すべきか
を、初心者の方にも分かるよう順を追って解説 します。
t検定とは何か(分析手法の位置づけ)
t検定とは、2つのグループの平均値に統計的な差があるかどうか を検証するための統計手法です。
「差があるように見えるが、それは偶然ではないと言えるのか?」
という問いに答えるために用いられます。
たとえば次のような疑問は、t検定によって検証できます。
- 男性と女性で満足度の平均に差があるか
- 研修前と研修後でテスト得点は向上したか
- A案とB案で成果指標に違いがあるか
統計解析では「平均との差があるかどうか」だけでなく、その差が統計的に意味のあるものか を判断することが重要です。t検定は、そのための基本となる分析手法といえます。
t検定を使う判断基準
t検定は、次の条件を満たす場合に用いられます。
- 比較したいグループ数が 2つ
- 比較対象が 量的変数(間隔尺度・比率尺度)
- 平均値の差に着目したい
比較するグループが3つ以上の場合には、t検定ではなく 分散分析(ANOVA) を用いるのが一般的です。また、目的変数が順位尺度や名義尺度の場合には、t検定ではなくノンパラメトリック検定を検討します。
さらにt検定を実行する上では次の前提があることを覚えておきましょう。
t検定を行う前提条件
- 標本は無作為に抽出されていること
- 母集団の分散は正規分布もしくはそれに近いものであること
- 2つのグループの母集団の分散が等しいこと
t検定の種類
さて、t検定には主に2つのt検定があります。「対応がある」のか「対応がない」のかの2つです。
独立サンプルのt検定(対応のないt検定)
独立サンプルのt検定は、互いの独立した2つのグループの平均値を比較する手法です。今回はこちらの手法をメインで扱います。
・男性と女性の性別でスコアが違うのか
・A店舗とB店舗とで違いがあるのか
・実験群と対照群で違いがあるのか
各データはどちらか一方のグループにのみ属し、同じ対象が重複して含まれることはありません。
対応のある t検定
もう一つが「対応のある t検定」です。「対応のあるt検定」は、同一対象に対する2時点・2条件の比較 に用いられます。
例
- 施策実施前と実施後
- トレーニング前後
- 介入前後の測定値
この場合、個人ごとの差分に着目して平均の変化を検証します。
対応のない2つのグループの平均値の差の検定~t検定~
詳しくは別のコラムにて解説を行うとして、今回は2つのグループを比較する対応のない2つのグループの差の検定に焦点を当てて解説を行っていきましょう。
平均値の差の検定は、手元のデータ(標本)において2つのグループの平均値に差があった場合、母集団でも同様の差が見られるのか、統計的にその差が意味のあるものであるのかを確かめる手法です。たとえば、2つのグループの学生に行ったテストの平均点が異なっていた場合、その差が母集団(全体)でも同様に成り立つのか?その2つのグループ間の点数の差には意味があるのか、または偶然なのかを確認するときに利用します。
そのために必要なデータ項目は、グループ(名義)がわかる変数と、平均値を求めるための量的変数の2つの変数で実行可能です。なお、2変数より大きい、つまり3つ以上グループを比較するときは、一元配置分散分析などの手法で行います。
なお、t検定を行う際の前提条件には、無作為抽出のほかに2つあります。1)2つのグループの両方の分布が正規分布をしていること。2)2つのグループの分散が等分散であることです。この2つの条件をクリアしてはじめてt検定を行うことができます。SPSS Statisticsでは、1)については、t検定を行う前にチェックを行います。2)については、等分散性のRevene検定については、t検定の実行と同時に行い出力もされます。
さて、それでは2つのグループに差があるかどうかを確かめていきましょう。利用するデータは、これまでと同じサンプルデータ[demo.sav]です。今回は、キャンペーンに反応したグループと反応していない2つのグループによって世帯年収に違いがあるのかを確認していきます。
はじめにグループの比較を見てみよう。
まずはじめに検定を行う前に2つのグループにおいて平均値に差があるのかを基本統計量を利用して確認をしてみることにしましょう。

Step1:メニューから[分析]>[平均の比較]>[グループの平均]を選びます。

Step2: [グループの平均]ダイアログが表示されます。
ここでは、[従属変数]の部分に量的変数である[世帯全体の収入(千ドル)]を入れます。
さらに[独立変数]部分には、グループを表す変数である[反応]を入れて、「OK」を押します。
ポイントとしては、従属変数部分に量的データ、独立変数にはグループのわかる名義尺度を設定します。なお、今回はt検定ではなくまだグループ間の比較を行うため、独立変数部分は2つ以上のグループがあっても結構です。

Step3: 出力結果を確認しよう
左のような出力が出てきます。「反応あり」と「なし」で平均値が11(千ドル)ほど違いそうです。平均値を確認すると2つのグループに差があるように見受けられます。統計的に差があるのかを確認する必要があります。そこで今度は、t検定を利用して平均値の差を確かめます。
SPSSによる独立サンプルのt検定の実行

Step1: メニューバーから[分析]>[平均の比較]>[独立したサンプルのt検定]を選びます。
前半部分で紹介したように2つのグループの平均値を比較する際には「独立したサンプルのt検定」を選択します。

Step2: t検定のダイアログの設定
[独立したサンプルのt検定]ダイアログボックスが表示されます。
左側の変数候補リストから確認したい変数である[世帯全体の収入]を選択し、 [検定変数]に入れます。
[グループ化変数]部分には、2つのカテゴリ値をもつ変数を入れます。ここでは[反応]を入れましょう。
「反応(??)となっていますので、「グループの定義」を押して、グループの定義をします。

Step3 : グループの定義の設定
この例では、あり=0、なし=1です。そして、「続行」 を押します。
[独立したサンプルのt検定]の画面に戻ると、[グループ化変数]部分が反応(0,1)となっているはずです。これでOKです。
SPSSにおける対応なしの独立サンプルのt検定の出力結果と結果の見方

Step4 : t検定の出力を確認しよう
はじめに[グループ統計量]の部分で、各変数の度数や平均値、標準偏差、標準誤差について確認を行います。確認した上で、2つのグループの平均値の差があるかを確認するt検定を行います。
t検定を行う際には、前提条件として以下の3つを満たしていることが求められます。
正規性の検定は事前に行っておいていることが前提となりますが、このt検定では、まず「2つのグループの母集団の分散が等しい」という等分散性の検定を行います。

Step 5 : 等分散性のためのLeveneの検定(ルービーン検定)を確認する
SPSSの出力で言えば、[独立サンプルの検定]の左側の部分に該当します。
はじめに[等分散性のためのLeveneの検定]を見てみましょう。この検定においては前述とおり2つのグループの母集団の分散が等分なのかを検定します。この際の帰無仮説は「2つのグループの分散は等しい」、対立仮説は「2つのグループの分散は等しくない」となります。t検定では、「2つのグループの母集団の分散が等しいこと」が前提条件となりますので、帰無仮説を採用したいですね。
通常、検定というと帰無仮説を棄却したい場合が多いのですが、ここは採用をする必要があります。
そのため、この部分の[有意確率]が5%(0.05)を超える場合には、そのまま右側の[2つの母平均の差の検定]に進み、[有意確率(両側)]部分を確認します。今回の結果の場合、[有意確率]が0.106、つまり10.6%です。このため、等分散を仮定していると解釈することができるため[等分散を仮定する]行を確認します。[等分散性のためのLeveneの検定]の有意確率部分が5%に満たない場合には、[等分散を仮定しない]行に進み、右側の[2つの母平均の差の検定]を確認します。

Step 6 : 2つの母平均の差の検定を確認する
右側に移動し、[2つの母平均の差の検定]の[有意確率(両側)]を確認し、0.001となっていますのでその差は母集団においても同様の差があるといえる。統計的に有意であると解釈できます。したがって、ダイレクトメールの反応「あり」「なし」の2つのグループにおいて世帯収入に差があるということがわかります。
平均値の差の検定では、Levene検定の部分の解釈が若干ややこしいとも言えますので、注意をして分析を進めてください。
ここで重要なのは、「統計的に有意である」という結論が、 どこまで言えて、どこからは言えないのか を正しく理解することです。
今回の結果では、有意確率(両側)が 0.001 と 5%を大きく下回っているため、 「2つのグループの母平均には差がある」と結論づけることができます。 しかしこれは、差の“原因”を特定したわけではない という点に注意が必要です。
t検定はあくまで「平均との差が偶然かどうか」を判断する手法であり、 なぜその差が生じたのか、どの要因が影響しているのかを直接示すものではありません。 この点を誤解すると、分析結果を過剰に解釈してしまう危険があります。
t検定の結果をどのように解釈し、文章で説明するか
SPSSの出力結果を見て「有意だった」「有意でなかった」で終わってしまうのは、 統計分析としては不十分です。 重要なのは、その結果を第三者に伝わる形で説明できるか です。
たとえば今回の分析結果は、次のように文章化できます。
ダイレクトメールへの反応の有無によって世帯収入の平均値を比較した結果、
両群の平均値には統計的に有意な差が認められた
(t検定、p < .01)。
このように、「何を比較し」「どの検定を用い」「どの水準で有意だったのか」を 簡潔にまとめることが重要です。
有意差があっても「差が大きい」とは限らない
t検定では、有意確率(p値)によって差の有無を判断しますが、 p値は差の大きさを示す指標ではありません。
サンプルサイズが大きい場合、実務的にはほとんど意味のない差であっても統計的に有意になることがあります。そのため近年では、p値とあわせて効果量を確認することが強く推奨されています。
効果量(Cohen’s d など)は、平均との差がどの程度大きいのかを示す指標であり、 分析結果を実務や研究に活かすうえで非常に重要です。
効果量は、平均との差がどの程度大きいのかを定量的に示す指標です。独立サンプルのt検定では、代表的な効果量として Cohen’s d が用いられます。
一般的な目安として、Cohen’s d は以下のように解釈されます。
- 0.2 程度:効果が小さい
- 0.5 程度:効果が中程度
- 0.8 以上:効果が大きい
研究や実務では、「統計的に有意かどうか」だけでなく、その差が実務的・理論的に意味のある大きさかを、
効果量を用いて判断することが重要です。
t検定でよくある誤解と注意点
- t検定を何度も繰り返して多群比較をしてしまう
- 等分散性の検定結果を見ずに結果を解釈してしまう
- 「有意差が出た=原因が特定できた」と考えてしまう
- サンプルサイズの影響を考慮しない
これらはいずれも、SPSSを使い始めたばかりの方が陥りやすいポイントです。 分析手法の前提条件と結果の意味を正しく理解することで、 こうした誤りは防ぐことができます。
次に学ぶべき分析手法
t検定は2群比較に特化した分析手法です。 比較するグループが3つ以上ある場合や、 他の要因を統制しながら差を検証したい場合には、 別の分析手法を用いる必要があります。
- 分散分析(ANOVA)
- 共分散分析(ANCOVA)
- 回帰分析
これらの手法についても、今後の「SPSSの使い方」シリーズで順に解説していきます。
SPSSによるt検定でよくある質問
サンプルサイズが小さくても t検定は使えますか?
使用することは可能ですが、注意が必要です。サンプルサイズが小さい場合、検定の検出力(差を検出できる力)が低下し、実際には差があっても有意にならない可能性があります。また、サンプルサイズが小さいほど正規性の仮定の影響を受けやすくなります。分析結果を解釈する際には、p値だけでなく、データの分布や平均値の差そのものもあわせて確認することが重要です。
正規分布でないデータでも t検定を使ってよいですか?
基本的には、t検定は母集団が正規分布であることを前提としています。ただし、サンプルサイズがある程度大きい場合には、t検定は比較的頑健(ロバスト)であることが知られています。
一方で、分布が大きく歪んでいる場合や外れ値が多い場合には、ノンパラメトリック検定(マン・ホイットニーのU検定など)を検討することが望ましいでしょう。
等分散性の検定は必ず確認しなければなりませんか?
独立サンプル t検定を行う場合には、必ず等分散性(Leveneの検定)を確認する必要があります。
等分散性の前提を無視すると、t検定の結果が不適切になる可能性があります。
SPSSでは、等分散性の検定結果に応じて「等分散を仮定する」「等分散を仮定しない」どちらの行を見るべきかが明示されています。この点は初心者の方が特に間違えやすいポイントです。
有意差が出た場合、それだけで結論を出してよいですか?
有意差が出たことは、「平均との差が偶然とは言えない」ことを意味しますが、その差がどれほど重要かまでは示していません。実務や研究では、p値だけでなく効果量や平均値の差の大きさ、背景となる文脈をあわせて解釈することが重要です。統計的に有意であっても、実務的な意味が小さいケースも少なくありません。
今回ご紹介ソフトウェア

IBM SPSS Statistics
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